2019年3月6日水曜日
【たのしい裁判入門】 第1話 「山田太郎を追え~見えないあいつをカーチェイス~」①
(このシリーズは、事実を元ネタにしたフィクションです。ちょっくら、いろいろいじくってありますのでご了承ください)
はいどうも。 楽しい裁判入門、語り手の吉家孝太郎です。
もう、これは数年まえのことになるのですが。
僕がいまの会社に転職してしばらくが過ぎたころのことでした。基本的にうちの会社は建築に関係のある資材なんかを扱っているので、途中入社したての僕は、商品の知識を覚えたり、お客さんまわりをしたり、電話をとったり配達したり、まあ、人数が少ないので何でもやるわけなんですが。
ある日、1本の電話がかかってきて、事務員さんがガチャリと受話器をとったわけで。
「はい、・・・はい。しばらくお待ちください。・・・しゃちょー!法務局から電話です!」
おなじ部屋のデスクで聞いていた僕は、まだまだ「ホウムキョク」なんてことばはピンとこなかったのですが、なんか法律関係なところぐらいの軽い認識はありました。とはいえ「ええ。まああっしのような下っ端には関係のないことでございます」と思いながら、自分の仕事をしていたので、まさかその仕事がボクのそれからのメインになろうとは、この時点では思いもよりません。
さて、電話を受けて、社長はふがふが話を聞いていたのですが、なんだか「よくわからん」といった顔をしています。それもそのはず、そもそもこの話は、現社長の亡くなったお父さん(先代社長)の未処理の問題があたまをもたげてきた、というところがスタートなわけです。
受話器を置いた社長が、簡単に話をまとめてくれたのは、つまりこういう感じ。
「なんかいま、大阪のホウムキョクから電話があって、なんでもうちがキョウタクしているお金が10年かなんか経って時効になるらしく、返してほしければ、来い、みたいな話らしいわ」
・・・ちっともわかりません(笑)
まあ、この最初の電話は、法務局から「お金を返しますので手続きしてください」かなんか、そういう事情を伝えてきた連絡電話だったわけですね。社長からすれば、この話は先代が扱っていた件なので、先代が亡くなったりしたこともあって10年間話が中ぶらりんのままほったらかされてたことも、まあ問題なのですが、それは代替わりなどのゴタゴタもあるでしょうから仕方ありません。
で、社長は社長なりに古い資料を引っ掻き回したりして、一体なにがどうなっているのかを明らかにしたわけです。
「つまり、こういうことだ。前の社長の代に、『山田工業の山田太郎』というおっさんに資材かなんかを売ったんだけれども、それが代金未払いで、裁判になったらしい。で、裁判の結果いろいろゴタゴタあって、先代がついに山田太郎からなにかを差し押さえしようとしたんだけれども、裁判所で差し押さえするには、必要経費みたいなもんかようわからんけど、なんかお金を預けておかないといけないらしい。それが『供託金』というもので、それが預けっぱなしになっているらしいわ」
質問があります。
「あの、山田太郎さんはどうなさったんですか?」
「うーん、とっくの昔に夜逃げして、差し押さえもへったくれもない。実行できなかったままらしい」
質問2です。
「じゃあ、なんで10年もほったらかしに?」
「うーん、おやじ頑固だったからなあ!『だまって取り下げてしまうのはケッタくそ悪い!』とでも思って、そのままになったんじゃなかろうか」
質問3。
「あの・・・やまだたろうって、またベタな名前なんですが、マジなんですか?」
「これがなあ、山田太郎は中国か韓国籍の方だったらしく、通称名で本名じゃないらしいんだわ。おそらく、国に帰ってしまったんじゃないか。たしかにベタな名前すぎるな」
・・・で、この話がなぜかボクのところに降りかかるわけですよ。
「でな、吉家くん。この後処理、やってくれんかね。大阪の法務局行ったり、ちょっとごちゃごちゃするかもしれんけど、私が覚えている限りのことは、サポートするから!」
マジすか?!
・・・これが、すべてのはじまりだったわけで!(^^;
まあ、この時点では、これが「山田太郎追跡大作戦」になろうとは、まだ知る由もなかったのですが。
果たして、供託金は取り戻せるのか!
消えた山田太郎を探しまくらなくてはならないハメになったのはどうしてか!
東大阪から、神戸から姫路まで、速度超過しないように爆走カーアクションするハメになったのはなぜか!
まて次回!
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