2022年2月11日金曜日

【セルフヘアカットレシピ】 バリカン・セルフカットの実例 【長髪〜ショート】

 


  バリカンにまつわるあれこれを書いたシリーズも、5回目です。

 

 これまでは、バリカンのしくみや歴史などに焦点を当ててきましたが、今回はいよいよ実例を挙げながら

 

「ヘアカットレシピ」

 

として、紹介してゆきます。

 

 以前も書いたように、私のセルフヘアカットの目的は、

「伸びすぎた髪を、減らす」

ということなので、 

「散髪行ったね〜!」と言われるように、シュパーンと刈り上げたり、短く刈り込むような用途ではありません。


 なので、今回は、「長髪気味の男性のヘアを整える」というレシピでいきましょう。

 

 バラバラに伸びた状態から、ボリュームダウンさせる感じです。

 

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 ショートと表現するには、前髪から頭頂部が長いスタイル。



斜めはこんな感じです。真ん中で分けられるくらい。


 サイドからバックにかけて。エリ足は刈り上げではなく、自然に伸びた状態を維持(した風にまとめる)です。


<レシピ>


 使用バリカンはPanasonic ER-GF80/81など。70センチ以上スライドアタッチメントを搭載したものが望ましい。

 

1) 前髪から頭頂部

 


 70mmアタッチメントで、前髪から頭頂部にかけてまんべんなく刈ります。前髪を眉毛より下まで残したい場合は、前髪を避けて、その上から70mmで全カットです。

 まるっと頭全部刈って大丈夫です。男性の髪で70mmあるのは、頭頂部くらいで、他は全部それより短いので、どうせ刈れません。

(ロン毛長髪は除く)



2)サイド

 


 50mmで刈って、もっさりしていれば40mmまで落とします。まずはサイドを50mmで刈ってみましょう。

 後頭部より下も50mm残しておきます。

 

  ようするにカッパのお皿の部分は70mm残しておいて、そこから減らしてゆく感じです。

 今回の写真の例では、サイドは40mmで刈っています。

 

 

3)後頭部からエリ足 

 

 

 後頭部からは段階的に減らします。

 感覚としては「50→40→30」で首筋に向かって減らしていこうかな、という雰囲気でまず刈ってみて、「すそ・えり足がまだ長いなあ」と思えば、もう一段階減らしてゆく感じです。

  今回は、50mmから始めてたのですが、耳のラインから1センチ上くらいの幅をイメージして、そこから40mm、30mm、エリ足すそは20mmという感じで、段階的に落としています。

 

 刈り上げではないので、伸びた髪が最終的には首元に残るのですが、その長さが30mm以上あると、やっぱり人によっては「まだ長い」感じがするかもしれません。

 多少、お好みの部分です。



4 耳まわり


 すでにサイドは40mmで刈れているので、もみあげ部が長いと思えば、30mmもしくは20mmくらいでわずかに刈ってもOK。


 その前に、耳まわりアタッチメントで、ぐりぐり耳まわりを刈ってください。前から後ろから何度も刃を入れます。

 

 思っているよりも一気に刈れないので、安心してぐりぐり回してOK。以前のバリカンでは、生刃で輪を描くように刈っていたので、切り口がシュパーンとはっきりしていましたが、この耳まわりアタッチメントは、うまいこと長めの毛も残してくれるので、「いかにも散髪に行ったね〜」とはなりません。

 

 実際に刈ってみると、「いい具合に少しずつ減らせる」ことが実感できると思います。

 

 

 5 ボリューム落とし、もっさりした部分を減らす

 

  


 ナチュラルアタッチメントも良くできています。


 左右対称ではなかったり、一部分が盛り上がったままなどの時は、ナチュラルアタッチメントをつけて、ガシガシ頭の中に突っ込んでください。


 これも、一気には刈られないので、すこしずつボリュームを減らすことができます。


 昔はスキ機能が「ボリューム減らし」に使われましたが、Panasonicのナチュラルアタッチメントは、さらに自然度が増しており、適度にバラけて減らしてくれます。

 

 最終仕上げとして、耳まわり、サイド、すそ、エリ足など、末端部分から頭の中央に向かってシュパシュパ「ナチュラルアタッチメント」をつけたまま突っ込んでも大丈夫です。

 

 逆に言えば、付属の


 スキアタッチメントの出番がないくらいです。もし使うとしたら、前髪の先っちょを数センチくらいスくのに使うくらいでしょうか。


 頭全体のボリュームに対しては、ナチュラルアタッチメントがあればOKです。



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 というわけで今回のレシピでは、長髪ぎみの人が、「あえて自然な感じを残しながら、従来の髪型を維持する」みたいな雰囲気に仕上がりました。


 ご参考に!



* 髪型は個人の理想がそれぞれ大きく異なるので、今回のレシピはあなたにとって望ましい髪型を保証するものではありません。

  それぞれのアタッチメントの使い方、数値はあくまでも参考としてご利用ください。

「つるっぱげになったやないか!」と言われても記事主は責任を取れませんのでご了承ください。

 

 


 


 



 

 

2022年2月5日土曜日

セルフカットには2種類の意味がある! ~切れないバリカンがレビューに上がるのはなぜ?~

 



  こんにちは

 バリカン選びとセルフカットについて考えるシリーズも、第四回です。

 

 さて、バリカンのしくみや、メーカー・シリーズ別による性能や傾向を比較してゆくなかで、「売り手と買い手の間に、どうしても誤解や意見のすれ違いが生まれる」という ことがわかってきました。

 このすれ違いや溝は、意外に大きく、そのためにバリカン本体に対する評価も正反対になってしまう、ということが起きています。


 そこで、今回は


 ◆ セルフカットには2種類の意味がある

 ◆ 切れないバリカンがレビューに上がるのはなぜか?


といったあたりを解明してゆきましょう。

 

 第一回で、「バリカンとは切れちゃうものである」ということを書きましたが、そもそもこの時点で、大きな2つの方向性が生まれるわけです。

 

 それは、「切れてしまったほうがいいユーザー」と「切れてしまっては困るユーザー」です。

 

 たとえば、理美容師さんがバリカンを使うのであれば、取り回しやカットの技術は腕がカバーしますから、「切れてしまったほうがいい」ということになります。

 

 あるいは、「丸刈りやボウズ、スキンヘッド、ごく短い刈上げ」などを好む人は、シュンシュンバリバリ切れる機種を望むことでしょう。

 

 しかし、一般的なお子さんをカットしようとするママや、やや長髪ベースの髪型や、後ろ髪をわずかでも垂らしたい人は「切れてしまっては困る」ので、徐々に少しずつカットできることを望むわけです。

 

 ですから

 

「セルフカットはこうするんだよ!」「セルフカット向きのバリカンはこれだ!」

 

といったネットの記事があっても、読者は

 

「ああ、自然な髪型ができるんだな」

「ああ、カリッカリの刈上げができるんだな」

 

と自分に都合のいい読み取り方しかしません。

 

 けれど、もし、そのバリカンの使い方や機種の傾向が真逆だったら、どちらの人にとっても悲惨なことになってしまいます。

 

 だから「パッツンになった!」「切れすぎて丸坊主にしないといけなくなった」「全然切れない!」「よく切れる!」といったバラバラの感想やレビューが飛び出してくることになるわけです。

 

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 なので「セルフカット」には、2つの意味があり、あなたはどちらの意味でイメージしているかをまず選択する必要があると思います。

 

A)  カリッカリ、ツルッツル、シャキッシャキに刈り上げたい。ボウズにしたい、俊敏に尖らせたい!

 

B)  自然でふんわり、あれ?散髪いったの?くらいで押さえたい。パッツンは嫌だ!

 

 

このどちらの意味で「セルフカット」したいのか、それによって選ぶ機種が変わってくるわけですね。



 たとえば、Panasonicさんのサイトでは、AとBのどちらをイメージしているかで、ラインナップが違います。他社さんでは、バリエーションも少ないので、そこまで分けていません。


A) シャキシャキ向け

https://panasonic.jp/mens/products/hair.html


B) ふんわり向け

https://panasonic.jp/haircut/


 Aの方は、めちゃくちゃ男性向けで、それもガッツリボウズや刈上げしたい人向けに開発されているので、20㎜くらいの短髪までしか対応せず、しかし、刃は俊敏に切れて値段も高い、という傾向があります。


Bの方は、家庭用全般で、アタッチメントで極力髪を多く残して「少しずつ減らす」ことを主眼においています。バリカン性能は、Aよりも「ふつう」レベルに落としています。


 しかし、お互いの領域はカブっていたり、また使い方が重なる部分があるので、厳密明確にきっちり分かれているのはマズいため、うまーくそこはボカして表現してあります。

 

 たとえば、私が望むセルフカットは、

 

Bの「ボリュームが出てきてしまったところだけを減らしたり、伸びすぎたところを短くして、今の髪型を延命したい」

 

というものです。

 ↑の写真は、今日の私のサイド部分ですが、「おおむね、真ん中で分けられるくらいの長髪」をイメージしていただければと思います。


 実は、この写真の髪型、昨日あるバリカンで切ったばかりです。パッとみると、何もしていないように見えると思いますが、

 

◆ 何もしておらずこの髪長さなら、本来はもっともみあげ部分が乱雑に伸びている。

◆ 本来ならもっと耳にかかってくる毛が増えている

 

はずなのに、実はボリュームが減少しているのです。

 

  実際には、昨日風呂場で、サイドから後ろ、えり足などにかけて、「一回だけ丁寧にバリカンをかけている」のが正解で、それは


 

 

 このPanasonic ER-GS40 の25ミリ長だけをつかって刈っているわけです。


 ほんとうはこの機種では、スソに向かって15ミリ、5ミリといった具合に段階的に短くしてゆくと、なめらかに刈り落としてゆけるのですが、それをあえてせずに25ミリだけで放置すると

 

「カットに行っていないように、現状維持っぽく見せることができる」


という使い方ができるのです。(このあと、もみあげとかはもうちょびっとだけ揃えたいですがね)

 

 けれど、人によってはこれを見て

 

「全然切れてないじゃん!」

「全然刈れないじゃん!」

 

という印象を抱く人もいます。それはもしかしたら半分半分くらい、人によってイメージが真逆なのかもしれません。

 

 

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 さて、amazonさんのレビューなどをみていると、「全然刈れない」「虎刈りになる」といった話がときおり見られます。


 それらは特定の機種に多い傾向があるのですが、構造的、設計的に問題があるものもあれば、違った理由のものもあると思います。

 

 構造的にクレームが多い機種は、実際に購入して検証していないのでなんともいえませんが、写真から判断すると「バリカンが頭に当たる角度が、直角をイメージして設計している」ものが評価が低いように思います。

 

 バリカンを頭に当てる時に、「45度くらいの斜め下から差し入れる」イメージが普通だと思いますが、設計によっては「曲面に対して直角に刃を差し入れる」ことを要求する機種がたまにあります。

(アタッチメントも、それにあわせて角度が浅かったり、深かったりするので、おおむね判別できます)

 

 以前にこのシリーズでお伝えした「上から下ろしてカットする」タイプなどは、完全に直角要求ですが、下から刈り上げるのに、設計角度が直角に近い機種が存在するのです。

 

★その後、電器店で実物を確認してきました。レビュー評価が低い機種も、通常の好評化の機種も、本体についている刃の角度はほぼ同じで、違いはありませんでした。

  しかし、アタッチメントが実際に頭皮に当たる角度に違いがあり、

 ◆ 好評価の機種は、刃の角度とアタッチメント角度がほぼ同一

 ◆ 低評価の機種は、刃の角度よりアタッチメント角度が直角に近い

 ことがわかりました。このあたりが関係しているかもしれません。

 

  また、おなじメーカーで、基本的にはそのメーカーの機種は「刃の切れ味」については定評があるのに、なぜか一部の機種だけトラブルが多いものが見つかりました。

 

 その機種は、刃の横幅は他とあまり変わらないのに、ボディの全幅をあきらかにコンパクトに作っているために、刈った髪が刃の隙間やアタッチメントとの隙間に挟まりやすい、という点がありそうです。

 

 刃の幅はほぼ同じなので、切れ具合は一緒なのだけれど、刈られた髪がどこへ逃げて落ちるかが問題だというわけです。

 

 本体幅が広いと、同量の髪が挟まろうとしても、逃げて落ちる確率が高まりますが、本体幅が狭いと、その面積におなじ量の髪が密集して残りますから、バラけて落ちてくれません。

 だから結果的に「髪が詰まって切れない」となるわけですね。

 

 

  また、本来であれば「ガッツリ刈れる機種」「プロ向け機種」と「ちょびちょび刈れる機種」は設計思想が違うのですが、「ちょびちょび刈れる機種」で、つるつるのボウズやバリバリの刈上げを一気にしようとすると、毛がつまったりパワー不足で「虎刈りになるじゃん!」「ぜんぜん刈れないじゃん!」という感想になってしまうこともあると思います。

 

 そういう方は、各メーカーのラインナップの中でも「上位機種」「プロ向け機種」を選んだほうがよいのかもしれません。

 

 考え方としては、「刃から上の毛量、毛の長さがどれくらいあるのか」がその分かれ目です。

 

  稲作をイメージしてほしいのですが、稲穂が伸びていて、その穂先だけを刈るエネルギーと、根元から全部買って刈り株だけが残るエネルギーとはぜんぜんちがうことがわかると思います。

 

 コンバインは、根こそぎ刈って行きますが、当然パワーが必要で、かつ、刈られた長い稲の茎をさばく技術が必要です。

 

 同じように、長い毛量、長い毛足を一気に刈ろうとすると、「髪先をちょっとずつ刈る」設計になっている機種では、「毛の束をさばくこともできないし、深刈りすることも苦手」ということが起きます。

 

 言われてみれば当たり前の話ですが、ネットのレビューでは「よく切れる」「ぜんぜん切れない」という2つのボキャブラリーしか出てこないので、判別がしにくいということになるでしょう。

 

 

 けれど、今回お話したように

 

「自分はつるつるにしたいのか」「ふわふわにしたいのか」

 

という目線でレビューや機種別説明を読めば、メーカーが伝えようとしている意味も読み解けてくると思います。

 

 ご参考になさってください。

 

 

 





2022年2月2日水曜日

バリカン・セルフカットの歴史は、ナショナルの歴史?! セルフヘアカッター今昔


(Panasonic セルフへアカッター ER-GS40) 



 さあて、 バリカンを巡る旅も、いよいよ3回目に突入です。

 

 自分でセルフカットをしたい!という欲求のために、バリカンのあれこれ、その本質について研究を重ねてきたわけですが、実は

 

「セルフでヘアを切る」

 

ということをすでに40年近く研究している会社があります。

 

 それが、いわずと知れた家庭用バリカンの雄である「ナショナル・パナソニック」で、私がこどもの頃から製品が出ていますので、かなり歴史が長いことがわかります。

 

(わたくし、もうアラフィフですよ)

 

 今でこそ市販バリカンを使っての「セルフカット」「セルフヘアカット」ができるようになってきましたが、実はそこに至るまで長ーい研究の成果があるのだ、ということです。

 

 別に私はPanasonicの回しものではないのですが、本当に小学生の頃から父親がナショナルホームバリカンで刈ってくれていたので、その頃の製品の様子などを思い出すと現在の発展がよくわかるというものです。

 


 

 上の写真は、ナショナルホームバリカンや初期のスキカルのパッケージ写真ですが、「カット」や」「刈り上げ」に櫛を使っていることがわかります。

 

 つまり、櫛を使わないと、微妙に長さを調整しながらのカットはできなかったということです。

 

 まさか後の世のように、「アタッチメントをつけて、そのままガリガリ地肌に押し付けて刈ってゆく」なんて方法はあまり意識していなかったことがわかるのです。

 

 

 

 さて、前々回の記事で書いたように、バリカンというのは基本構造はあまり違わず、「ただ、歯が横に動いて切るだけ」の機械ですから、変幻自在のヘアカットを実現するには

 

 アタッチメントをどう開発するか

 

がすべてです。

 

 そこで、特に今回は「セルフヘアカッター」の進化に着目しながら、男性のヘアをどのように切ればいいのかを考察してゆきましょう!



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■ ナショナル・カリオ  ER322 ■



 男性のセルフへアカッターの歴史は、これから始まったと言っても過言ではない名作?いや迷作です。

 

 刈り上げスタイルは、しばらくすると髪がのびてだらしなくなりますが、サイド部分の三角形を復活させるために「三角に刈ればいいんだ!」と思わず思いついてしまったという恐ろしさ。


 なので、横から大きな歯で「三角形にカット」しようとしたのがこの機種!長い櫛が上に飛び出て、短い櫛が下に飛び出るので、結果的に刈り上げ三角が再現されてしまう、という設計です。

 

 またアタッチメント部分を外せば、巨大なバリカン刃(縦に長い)が出てきます。細かい部分はそれで刈れ、ということだったようです。


 他社からも類似品がいくつか出ましたが、ヒットしたのか、しなかったのか、髪だけに「キワもの」だったような気もします。


 しかし、この設計思想は、確実に後世に伝わってゆくのです。


(たしかに横は刈れるけれど、うしろやスソはどうしたのでしょう・・・)





■ ナショナル  ER324 ■

 


 ■ ナショナル ER325 ■

 


  ”自分でカット”という文字が目を引きますが、カリオから進化したセルフヘアカッターは「ひげそり」みたいな形になりました。

 

 ER324 / 325は、ほぼ似たような仕様です。


 この機種はちょっと変わっていて、画像で言えば「上」の部分に「仕上がり短・長」とだけ書かれています。

 

 いわゆるアタッチメントを使ってカットする機能はここに集約されており、「長短」の2パターンしか刈ることができません。(ボリューム落とし、と表示しています)

 

 そして、スイッチまわりが円になっていますが、アタッチメント部分がぐるりと180度回転して、バリカン刃そのものが出てくると「カット」ができます。これは単なるバリカンそのものです。

 バリカン刃には「スキ刈り板」がついていて、スキ刈りもできるようになっています。


 さて、この機種は「もみあげの調整」「キワや耳まわりの調整」はできるのですが、肝心のカットは「髪量の調整・ボリューム落とし」くらいしかできませんでした。

 

 なぜかというと、髪量調整コーム(上部分)は、短7mm、長9mmしか調整できず、髪を上から撫でることで、少しずつカットして減らすことしかできなかったからです。


 コームを地肌に当てて、肌から7mmもしくは9mm残してカットする、という理屈なのですが、上から下に向かってなでおろす形で使います。実はそれなのに、コーム部分にしかけがあって、1mmずつくらいしか一気には刈れないようになっています。

 つまり、 一気にザクッといかないようになっているのですが、この作りだと本当に少しずつなで落とすくらいしかできないのではないか?と思います。

 

 さて、実はこの設計には前段階があって「スキカル入門」という初心者向け、子供向け製品がこの前に登場していた経緯がありました。

 


 (ER352 スキカル入門)



(ER353 らくらくショートヘアー)


 この2機種、どちらも基本設計はおなじですが、上部に「仕上がり 短・長」と書かれたコームがあることがわかります。そう!ER324/325と同じですね。

 スキカル入門もらくらくショートヘアーも、結局は上からなでおろす形で、ちょっとずつ髪量を減らす、という機種でした。

 

↑取説でもちゃんと、上からおろすように書かれています。


 一気に切れてしまわないので、初心者でも安心なのですが、「ただちょっとずつ髪が減る」というだけの構造なので、本格的なセルフカットとは呼べない残念さがあったと思われます。


 これらの機種で「上からなで下ろす」という刈り方は打ち止めになってしまいます。


 コームをつかって残量を調整するという発想は、カリオ時代から受け継がれているのですが「横刈り」もダメ、「上から刈り」もダメだとわかってきたのです。





■ ナショナル セルフヘアカッター ER326 ■



 さあて、いよいよこの機種から「セルフヘアカッター」の名に恥じない機能がつくようになりました。

 上からなでおろすカット方法を見直して、現行とおなじ「下から刈り上げる」方法がとられるようになったのがER326です。

 刈り高さは40mmまで対応するようになり、明らかに(ベリーショートだけながら)前髪や頂点部分まで刈れるように革新されたわけです。


 この10mm〜40mmというロングアタッチメント方式は、現行機種のER-GF41・71・81にまで引き継がれています。


 ただ、この機種も万能ではありません。さすがに頂点からキワ・スソまでを同じアタッチメントで処理するのは厳しく、ひとつあたりの段階が大きすぎる結果になってしまいました。

 特にサイドやうしろなど、細かい刈り上げがしたいときには、1センチ刻みというのはちょっと荒すぎます。結果として段差を解消するために、かなり細かくバリカン刃で調整しなくてはいけなくなったのです。




■ Panasonic ER327 ■



 そこで登場したのが、現行とほぼおなじ形のER327です。

 

 ER327は25mmまで5mm刻みのスライドアタッチメントが搭載されており、「下から刈り上げ」方式です。

 

 ところが、何を血迷ったか、ここであの「上からなでおろしアタッチメント」が復活。

 

 アタッチメントを取り替えることで、ER326のようにも使えるし、ER324やER325のようにも使える、という贅沢な仕様になりました。

 

 しかし、たぶん購入した人は、使っているうちによくわからなくなったと思います。なぜなら「下から刈り上げ」方式と、「上からなでおろし」方式は全く本質的に意味が違うので、構造をわかっていないと使い分けすることが混乱するはずだからです。

 

 今回の記事でいちから説明したので、「上から」「下から」の違いはもうわかったと思いますが、買った人はマニュアルを読み込まないと、絶対途中で間違えて逆に使ったことでしょう。

  逆に使うと、切れすぎてしまったりパッツンになるので、それはもう悲劇です。


 想像するだけで恐ろしい、罠のような製品になってしまいました。

 

 

 

■ 廃盤 GS50 と  Panasonic ER-GS40 ■


 さて、いよいよ最新機種です。実は同時に発売されたGS50とGS40ですが、現在はGS40のみが販売継続で、GS50は廃盤になりました。


 


(ER-GS50)

 


 (ER-GS40)

 

 これらは、既に登場した ER326 ER327のマイナーチェンジ版です。特にGS40では、亡霊のように蘇った「なでおろしアタッチメント」が取り除かれました。

 

 結果として、5mm〜25mmの「下から刈り上げアタッチメント」のみが残ったわけです。

 

 この現行機種では、「前髪と頂点」については”あきらめ”ました。

 

 セルフカットでもっともエネルギーを注ぐべきである「サイド」「キワ」「スソ」「うしろ」などに重点をおいて、前髪からトップはあまりいじらないことにしたのです。

 

 しかし、5mmごとに「刈り上げる」ことだけを専門にしたので、男性のセルフカットという面ではもっとも使いやすい機種になったと思います。

 

 これ以上「できることを増やす」と、結局メインストリームである「家庭用バリカン」と差がなくなってしまい、「セルフへアカッター」ならではの「簡単さ」が失われるのかもしれません。

 

 

 

 しかし、今後まだまだ発展進化するかもしれないパナソニックさんの研究陣に、ついつい期待してしまうところです。

 

 まーた、そのうち「上からなでおろし」型が復活したりしてね。てへ。

 

 

(おしまい)




 


 

セルフカットや子供の散髪に! 瞬時にわかる「バリカン」の違いと選び方

 


 こんにちは

 

 今回は前回の続きで、ちまたに出回っている数百種類ものバリカンの中から、どんなものを選べばよいかあっという間にわかる魔法の分類方法をお話しようと思います。

 

 前回の記事で、「バリカンとはそもそも何か?」ということについてはバッチリ書いておきましたので、そちらも参照しながらお読みください。

 

 大きく分けて、バリカンには3つの分類がある!

 

  今日覚えて帰ってもらうのは↑これだけです。シンプルですね。ではレッツゴー!

 

 

 

◆ 分類1 ◆ 20㎜以下向けバリカン

 

 まず、もっとも基本となるのは、丸刈りや坊主にするための「つるつる頭バリカン」です。東京では「五厘刈り」を2㎜くらいで刈りますし、大阪では「一枚刈り」と言ったりもします。これも2㎜です。

 

 要するにもともとバリカンはつるつるにするための道具ですから、「とにかく短くしたい」「刈り上げたい」という希望を満たすのがこの製品群です。

 

 なので、「昔のバリカン」とか「基本的な安いバリカン」とかは、20㎜くらいまでしか対応していません。


  

↑写真はロゼンスターのCB-211、おそらくもっとも安い1000円くらいで入手できるバリカンですが、15㎜までしか対応していないことがわかると思います。

 

 パナソニックのベーシックなバリカンも、3.6.9.12.15.18㎜くらいまでしか刈れません。アタッチメント方式では、3㎜ごとに段階になっているものが多いです。


 さて、高級機種になると、やっぱり基本は20㎜くらいまでしか刈れないのだけれど、ダイヤルを回して刃を出し入れすることで「細かい段階に調整できるもの」「1㎜単位で刃を動かせるもの」があります。

 

 これは主に男性向けメンズバリカンとして売られていますが、それは当然ボウズや刈上げを想定しているからです。

 ボウズ、モヒカン、ベリーショート、前髪のほぼない刈上げなどを主とする方は、このモデルがオススメです。


 

 

◆ 分類2 ◆ 40㎜以下向けバリカン

  

 バリカンの基本は20㎜以下ですが、そこにアタッチメントをつけて40㎜以下くらいまで対応している機種が、もっともたくさん販売されています。


 ダイヤルで刃を出し入れできる機種でも、ダイヤル+アタッチメントで40㎜前後を実現しているタイプも多いです。パナソニックは、10・20・30・40の1センチ刻みが主ですが、他社はもう少し細かく調整できるものもあります。

 

  テスコムは30㎜や35㎜まで。

 マクセルイズミだと1㎜~35㎜まで1㎜刻み、という感じですね。


 しかし、本来ボウズやベリーショートの人向けの20㎜以下領域については「細かい段階」が必要ですが、40㎜くらいの位置だと、実は細かい調整ができても、できなくても他人にはわかりません。

 逆に全部の髪が40㎜で揃ってしまうと変てこなので、実際にはスキ機能などをつかって、長さをバラけさせる必要があります。

 なのでpanasonicの1センチごとにざっくり、というのはあながち間違っていないのです。

 


 ↑写真はパナソニックのER-GF41以上のセットに付属する40ミリアタッチメントです。1センチ刻みですが、ざっくり長く残すために使います。


 男性の場合、頭頂部を40㎜残すと、短髪時代のベッカムみたいな感じです。いわゆるソフトモヒカンと呼ばれる髪型をイメージしてください。

 男の子の場合は、ちょっとツンツン髪のショートカットになるので、ファミリー向けにも40㎜までのバリカンセットが役立ちます。

 

  最近はamazonで中国製、中国ブランドのバリカンも安く販売されていますが、やっぱり40㎜クラスの設計になっています。国内外ともに、本体が20㎜くらいまでダイヤル式、それにアタッチメントで40㎜まで、というセットが多いと思います。

 ブラウンなども35㎜くらいまでの設計です。

 

 

 

◆ 分類3 ◆ 70㎜以下対応バリカン

 

  頭頂部から前髪まで、眉毛にかかるくらいまでは残したいという人も多いと思いますが、そうした人は70㎜くらいに対応しているバリカンを選ぶ必要があります。そうしないと「三戸なつめ」ちゃんみたいになります。

 

 70㎜クラスは、頭頂部を長く残せるので、比較的長髪にして、かつ後頭部は刈り上げるなどのダイナミックな髪型が可能です。

 

 この70㎜クラスを実現する設計は、比較的新しいので、古いバリカンにはこの発想がなく、セットに器具がついていません。また中国製バリカン、HATTEKERなどにも、このようなセットは登場していません。

 

 そもそも分類1の20㎜以下の「ボウズにする」のがバリカンの基本ですから、だんだんとイレギュラーな使い方をしているということになるわけです。

 


 ↑ 写真はパナソニックのER-GF81などに付属する70㎜アタッチメントです。パナには80㎜までいけるシリーズもあります。


 これくらいたくさん髪を残せる、というのはファミリー誰にでも使える万能型と言えるでしょう。




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 最後に「セルフカット向け」のバリカンはどうなっているのかお伝えしたいと思います。


 もちろん、どのバリカンを使ってもセルフカットはできるのですが、男性の場合に限れば

 

◆ 前髪が長髪

◆ 前髪や頭頂部も短い


という2パターンに分かれると思います。

 

 前髪が長い人は70㎜対応機種をひとつは持っておくとよいです。どんな場合でも応用がきくからですね。

 

 逆に、ほとんど短髪しかしない、という人は、20㎜以下のベーシック機種でも、メンズ用とタイトルがついている高級ミリカットバリカンでもお好きに選んでいただけると思います。

 

 さて、私もセルフカットをはじめて気付いたのですが、「セルフカットに適したバリカン」というのは、ひとつ大きな特徴があります。

 

 それは

 

 バリカンの長さが短いこと

 

です。

 

 バリカンはほとんどの場合、長い棒状になっているのですが、自分でセルフカットをするときには、棒が長すぎるとすそ、エリ足などの首に近い部分の後ろ側が当たって刈りにくいのです。

 

 なので、セルフカット向けとはっきり謳っているバリカンは、全長が極端に短く、ずんぐりむっくりしています。

 

(Panasonic ER-GS50)
 

(Panasonic ER-GS40)


 家庭用バリカンでは最長の歴史があるPanasonicでは、昔からセルフカット用バリカンを何機種も発売しているのですが、現行品は、ER-GS40のみです。

 

 すこし前まではER-GS50もあったのですが、今は販売終了です。

 

 この2つ、何が違うかというと、GS50のほうは、40㎜まで1センチ刻みで刈れて、GS40のほうは25㎜まで5㎜刻みで刈れるようになっています。

 

 つまり、頭頂部も刈っていいよというのがGS50で、耳横(サイド)、エリ足、すそが中心だよというのがGS40なのです。

 

 GS40のほうは、頭頂部はアタッチメントをつけて触れるのはNGです。自力で手作業で調整カットするのは、どの機種でもできるので、それはOKですが。

 

 Panasonicとしては、頭頂部をロングに残すのはファミリー向けの一般機種でできるので、むしろエリ足やスソに特化した専用機種を現行品で残したいと考えたのでしょう。

 

 (せっかく全長を短くしているのに、アタッチメントを40㎜も伸ばすと、長いバリカンになってしまう、という側面もあるかもしれません)