2022年2月2日水曜日

バリカン・セルフカットの歴史は、ナショナルの歴史?! セルフヘアカッター今昔


(Panasonic セルフへアカッター ER-GS40) 



 さあて、 バリカンを巡る旅も、いよいよ3回目に突入です。

 

 自分でセルフカットをしたい!という欲求のために、バリカンのあれこれ、その本質について研究を重ねてきたわけですが、実は

 

「セルフでヘアを切る」

 

ということをすでに40年近く研究している会社があります。

 

 それが、いわずと知れた家庭用バリカンの雄である「ナショナル・パナソニック」で、私がこどもの頃から製品が出ていますので、かなり歴史が長いことがわかります。

 

(わたくし、もうアラフィフですよ)

 

 今でこそ市販バリカンを使っての「セルフカット」「セルフヘアカット」ができるようになってきましたが、実はそこに至るまで長ーい研究の成果があるのだ、ということです。

 

 別に私はPanasonicの回しものではないのですが、本当に小学生の頃から父親がナショナルホームバリカンで刈ってくれていたので、その頃の製品の様子などを思い出すと現在の発展がよくわかるというものです。

 


 

 上の写真は、ナショナルホームバリカンや初期のスキカルのパッケージ写真ですが、「カット」や」「刈り上げ」に櫛を使っていることがわかります。

 

 つまり、櫛を使わないと、微妙に長さを調整しながらのカットはできなかったということです。

 

 まさか後の世のように、「アタッチメントをつけて、そのままガリガリ地肌に押し付けて刈ってゆく」なんて方法はあまり意識していなかったことがわかるのです。

 

 

 

 さて、前々回の記事で書いたように、バリカンというのは基本構造はあまり違わず、「ただ、歯が横に動いて切るだけ」の機械ですから、変幻自在のヘアカットを実現するには

 

 アタッチメントをどう開発するか

 

がすべてです。

 

 そこで、特に今回は「セルフヘアカッター」の進化に着目しながら、男性のヘアをどのように切ればいいのかを考察してゆきましょう!



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■ ナショナル・カリオ  ER322 ■



 男性のセルフへアカッターの歴史は、これから始まったと言っても過言ではない名作?いや迷作です。

 

 刈り上げスタイルは、しばらくすると髪がのびてだらしなくなりますが、サイド部分の三角形を復活させるために「三角に刈ればいいんだ!」と思わず思いついてしまったという恐ろしさ。


 なので、横から大きな歯で「三角形にカット」しようとしたのがこの機種!長い櫛が上に飛び出て、短い櫛が下に飛び出るので、結果的に刈り上げ三角が再現されてしまう、という設計です。

 

 またアタッチメント部分を外せば、巨大なバリカン刃(縦に長い)が出てきます。細かい部分はそれで刈れ、ということだったようです。


 他社からも類似品がいくつか出ましたが、ヒットしたのか、しなかったのか、髪だけに「キワもの」だったような気もします。


 しかし、この設計思想は、確実に後世に伝わってゆくのです。


(たしかに横は刈れるけれど、うしろやスソはどうしたのでしょう・・・)





■ ナショナル  ER324 ■

 


 ■ ナショナル ER325 ■

 


  ”自分でカット”という文字が目を引きますが、カリオから進化したセルフヘアカッターは「ひげそり」みたいな形になりました。

 

 ER324 / 325は、ほぼ似たような仕様です。


 この機種はちょっと変わっていて、画像で言えば「上」の部分に「仕上がり短・長」とだけ書かれています。

 

 いわゆるアタッチメントを使ってカットする機能はここに集約されており、「長短」の2パターンしか刈ることができません。(ボリューム落とし、と表示しています)

 

 そして、スイッチまわりが円になっていますが、アタッチメント部分がぐるりと180度回転して、バリカン刃そのものが出てくると「カット」ができます。これは単なるバリカンそのものです。

 バリカン刃には「スキ刈り板」がついていて、スキ刈りもできるようになっています。


 さて、この機種は「もみあげの調整」「キワや耳まわりの調整」はできるのですが、肝心のカットは「髪量の調整・ボリューム落とし」くらいしかできませんでした。

 

 なぜかというと、髪量調整コーム(上部分)は、短7mm、長9mmしか調整できず、髪を上から撫でることで、少しずつカットして減らすことしかできなかったからです。


 コームを地肌に当てて、肌から7mmもしくは9mm残してカットする、という理屈なのですが、上から下に向かってなでおろす形で使います。実はそれなのに、コーム部分にしかけがあって、1mmずつくらいしか一気には刈れないようになっています。

 つまり、 一気にザクッといかないようになっているのですが、この作りだと本当に少しずつなで落とすくらいしかできないのではないか?と思います。

 

 さて、実はこの設計には前段階があって「スキカル入門」という初心者向け、子供向け製品がこの前に登場していた経緯がありました。

 


 (ER352 スキカル入門)



(ER353 らくらくショートヘアー)


 この2機種、どちらも基本設計はおなじですが、上部に「仕上がり 短・長」と書かれたコームがあることがわかります。そう!ER324/325と同じですね。

 スキカル入門もらくらくショートヘアーも、結局は上からなでおろす形で、ちょっとずつ髪量を減らす、という機種でした。

 

↑取説でもちゃんと、上からおろすように書かれています。


 一気に切れてしまわないので、初心者でも安心なのですが、「ただちょっとずつ髪が減る」というだけの構造なので、本格的なセルフカットとは呼べない残念さがあったと思われます。


 これらの機種で「上からなで下ろす」という刈り方は打ち止めになってしまいます。


 コームをつかって残量を調整するという発想は、カリオ時代から受け継がれているのですが「横刈り」もダメ、「上から刈り」もダメだとわかってきたのです。





■ ナショナル セルフヘアカッター ER326 ■



 さあて、いよいよこの機種から「セルフヘアカッター」の名に恥じない機能がつくようになりました。

 上からなでおろすカット方法を見直して、現行とおなじ「下から刈り上げる」方法がとられるようになったのがER326です。

 刈り高さは40mmまで対応するようになり、明らかに(ベリーショートだけながら)前髪や頂点部分まで刈れるように革新されたわけです。


 この10mm〜40mmというロングアタッチメント方式は、現行機種のER-GF41・71・81にまで引き継がれています。


 ただ、この機種も万能ではありません。さすがに頂点からキワ・スソまでを同じアタッチメントで処理するのは厳しく、ひとつあたりの段階が大きすぎる結果になってしまいました。

 特にサイドやうしろなど、細かい刈り上げがしたいときには、1センチ刻みというのはちょっと荒すぎます。結果として段差を解消するために、かなり細かくバリカン刃で調整しなくてはいけなくなったのです。




■ Panasonic ER327 ■



 そこで登場したのが、現行とほぼおなじ形のER327です。

 

 ER327は25mmまで5mm刻みのスライドアタッチメントが搭載されており、「下から刈り上げ」方式です。

 

 ところが、何を血迷ったか、ここであの「上からなでおろしアタッチメント」が復活。

 

 アタッチメントを取り替えることで、ER326のようにも使えるし、ER324やER325のようにも使える、という贅沢な仕様になりました。

 

 しかし、たぶん購入した人は、使っているうちによくわからなくなったと思います。なぜなら「下から刈り上げ」方式と、「上からなでおろし」方式は全く本質的に意味が違うので、構造をわかっていないと使い分けすることが混乱するはずだからです。

 

 今回の記事でいちから説明したので、「上から」「下から」の違いはもうわかったと思いますが、買った人はマニュアルを読み込まないと、絶対途中で間違えて逆に使ったことでしょう。

  逆に使うと、切れすぎてしまったりパッツンになるので、それはもう悲劇です。


 想像するだけで恐ろしい、罠のような製品になってしまいました。

 

 

 

■ 廃盤 GS50 と  Panasonic ER-GS40 ■


 さて、いよいよ最新機種です。実は同時に発売されたGS50とGS40ですが、現在はGS40のみが販売継続で、GS50は廃盤になりました。


 


(ER-GS50)

 


 (ER-GS40)

 

 これらは、既に登場した ER326 ER327のマイナーチェンジ版です。特にGS40では、亡霊のように蘇った「なでおろしアタッチメント」が取り除かれました。

 

 結果として、5mm〜25mmの「下から刈り上げアタッチメント」のみが残ったわけです。

 

 この現行機種では、「前髪と頂点」については”あきらめ”ました。

 

 セルフカットでもっともエネルギーを注ぐべきである「サイド」「キワ」「スソ」「うしろ」などに重点をおいて、前髪からトップはあまりいじらないことにしたのです。

 

 しかし、5mmごとに「刈り上げる」ことだけを専門にしたので、男性のセルフカットという面ではもっとも使いやすい機種になったと思います。

 

 これ以上「できることを増やす」と、結局メインストリームである「家庭用バリカン」と差がなくなってしまい、「セルフへアカッター」ならではの「簡単さ」が失われるのかもしれません。

 

 

 

 しかし、今後まだまだ発展進化するかもしれないパナソニックさんの研究陣に、ついつい期待してしまうところです。

 

 まーた、そのうち「上からなでおろし」型が復活したりしてね。てへ。

 

 

(おしまい)




 


 

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