(Panasonic ER-GF81 カットモード)
みなさんこんにちは。
目からウロコなバリカン選びのコーナーがやってきました。
コロナ禍ということもあり、人との接触を極力避けて「理髪店」「美容店」へ行く回数を減らして
「バリカン」
の購入が増えているそうです。かくいう私もセルフカットのために「バリカン」を買い揃えました。
うちのきょうだいが「美容師」をやっているものですから、プロの目線も踏まえて、
「絶対に間違いがない、バリカンの選び方」
について、今日はお話しようと思います。
この話を一回読んでおけば、みなさんのバリカン選びに「迷いがなくなる」ことは確実です!
◆ ポイント1 ◆ バリカンは切るものであり、切れてしまうものである。
バリカンというものは「刈る」とか「刈り上げる」ものだ、と一般的にはイメージしていると思いますが、まずは「切る機械である」と認識しましょう。
ハサミのように髪を切ってしまうもので、刃が当たれば「切れちゃう」ものです。
なので、バリカンを使って失敗する人は全員、
「前髪や後ろ髪がまっすぐに切れてしまって、パッツンになってしまう」
という悲劇を体験します。 これは「刈る」機械だと思っていたのに「切れて」しまったことによる悲劇です。
そもそも僕たち私たちは「刈る」とはなんぞや?ということをよくわかっていません。それなのに刃を当ててしまうと「切れて」しまうので、変てこなまっすぐヘアスタイルになってしまうわけですね。
だから、最初に認識を改めましょう!
「バリカンとは切れてしまう機械だ」
ということを意識するのです。
切れてしまう機械という意味では、市販されているすべてのバリカンはほぼ同等です。1万円のものも、1000円程度で買えるものも、「切る機能」としてはまったく同じなので
どれを選んでもかまわない
ということが言えます。
(Panasonic セルフヘアカッター ER-GS40 の刃先)
写真は、自分一人でおっさんのヘアカットができるというパナソニックのER-GS40という機種の刃先ですが、すべてのバリカンの刃先は、ほぼ同じです。
2枚の刃がモーターによって左右にスライドして、その間に入った毛を切る装置ですから、どこのブランドでも、どの機種でもやっていることはまったく同じです。
では、「すべての機種がまったく同じ」なのだとしたら、僕たち私たちは、いったい何を選んでいるというのでしょうか?
世の中に山ほど出回っているバリカンに多様な機種が存在する必要がなくなってしまいます。
そこで、2つめのポイントが大事になってきます。
◆ ポイント2 ◆ バリカンの使い方の真実は、「いかに切れてしまわないか」だ!
ポイント1で述べたように、バリカンは切れてしまう機械です。それはもうめちゃくちゃ切れてしまうので、素の状態で髪にバリカンを当てると「ボウズ」になるくらい丸刈りで切れてしまいます。
前髪などはすっぱりパッツンになるし、刃が当たった部分は0㎜や1㎜まで切れてしまうのです。
理髪店や美容院では、ほとんどの理美容師は、素の刃の状態に近いところから髪にバリカンを当てますが、彼らでも実は切れてしまうので、「切れてしまわないように、技術で手首を返して逃がしている」のですね。
なので、理美容師さんは「切れてしまわないように動かす技術」で、おまんまを食べていることになります。
当然、素人である僕たち私たちは、おなじことはできず、マネをすると、「切れてしまい」ます。なので、刃形がくっきり残ったり、ギザギザになったり、段々になったりします。段々に切れてしまうからです。
じゃあ、素人でも「切れてしまわない」ためには、どうしたらいいのか?それが3つめのポイントです。
◆ ポイント3 ◆ バリカンを買うんじゃない!アタッチメントを買うんだ!
これが今日の一番のポイントかもしれません!僕たち私たちは、「バリカンを選択して買っている」と思っていますが、実はそれが大きな間違いだったのです。
バリカンの本体は、刃が電池で横に動くだけのシンプルな機械です。なので、実はどれを買ってもそう大差はありません。
(中には、部品が比較的折れやすい、なんてメーカーもありますが、それは横に置いといて)
そしてそのままでは、どのバリカンもめっちゃ切れてしまうので、「切れないように制御」する必要があります。
まるでエヴァンゲリオンみたいなもので、ロボットみたいに見えているのは全部制御するために装甲板で囲まれているから、ということです。
その「切れない」ための制御板が、バリカンにいろいろついてくる「アタッチメント」ということになります。
だから私たちが選んで買うべきなのは、「バリカン」ではなく「アタッチメント」を見て決める必要があるのです。
この点に関しては、理美容師さんと一般人では意見が真逆に違います!(要注意)
なぜなら、理美容師さんは、制御する技術を持っているので、「切れないように押さえ込む」ことはまったく不要だからです。そこは腕がカバーします。
だったら、彼らが選ぶ機種は、「切れまくる中でも、さらにめっちゃ切れる機種」ということになります。
そんなもんを素人が選んでしまうと、いきなり無免許で新幹線を走らせるかのごとく、
「切れ味鋭いパッツン」
が出来上がってしまうのです。
さて、日本で買える一番安くてシンプルなのは、「ロゼンスター」の「CB-211」という機種です。
この機種、なんと実売1000円ちょっとで買えます。乾電池式で、パワーも十分あります。
(1.5V電池2本で、3V駆動です。逆に、へんな話ですが充電・交流両用式の内部電池は、1.2Vのニッカドもしくはニッケル水素電池1本だけですから、乾電池のほうが電圧が高いくらいです)
写真に青いアタッチメントが写っていますが、これをスライドさせると3㎜から15㎜まで刈り高さを替えることができます。
アタッチメントを外せば、ボウズ丸刈りが可能で、ほぼ0㎜全剃りみたいになるということですね。
逆に言えば、こうした3㎜とか15㎜とかのアタッチメントがついている機種を使うと、
「すべての髪が3㎜とか15㎜とかに短くなってしまう」
ということです。ふんぎゃー!
なので、こうした機種を使いこなすには、「自分の腕、技術で、髪の先っちょだけしか切れないように、力を抜いて、毛先方向に動かしまくる」必要があるのですね。
もちろん、理美容師さんは、それができるので、この機種でなーんの問題もありません。仕事に使うにはちょっと非力なだけです。
そして、素人さんでも、頭髪の長さが全部完璧に0㎜(僧侶)から15㎜(ボウズ)な人には、とっても適しています。激安だし。
取りあえずアタッチメントに沿わせて頭皮にバリカンを押し付けていれば、その長さでしか切れないからです。
(つまり、ボウズにする人は、結局なんでもいい)
けれど僕たち私たちの大半は、髪が1センチ五ミリ以上はあります。前髪なんか10センチ近くありますから、それを1.5センチにされてしまったら、たまったもんじゃありません!
そこで次の話です。
◆ ポイント4 ◆ そもそも刈るってなんなんだ?
さっきから「切れてしまう」話ばかりしていますが、バリカンとは「刈る」ものだと一般には認識されています。なので「刈る」とは何かについておさらいしますが、結局は前項目でお話したとおり
「ある一定の長さに全部切ってしまう」
ことが「刈る」という意味です。羊さんの毛刈りをすると、皮膚から数センチを残して、全部切ってしまうわけですね。
丸刈りもそうです。ボウズもそうです。一定の寸法だけを残して、あとはすべて切り落としてしまうのが「刈る」という行為なのです。
上の写真は Panasonic ER-GF81 ER-GF71 ER-GF41 についてくる「刈高さアタッチメント」です。ロゼンスターはスライド式でしたが、こちらは3㎜ごと段階になっています。
このメーカーでは3㎜から18㎜まで、このタイプのアタッチメントで刈り高さを調整できます。
やっていることはロゼンスターとまったく同じですね。ダイヤル操作で刃を出し入れして、長さを調整するようなメーカー、機種もありますが、それでもやっていることは同じです。
私は1970年代の生まれですが、ちょうど80年代くらいに小学生だったので、父がナショナルの家庭用バリカンでよく散髪してくれました。
この時は、バリカン本体と上のようなひし形アタッチメントが同封されていただけで、それだけのバリエーションで刈られるものだから、後頭部はほぼボウズにされてしまいました。
前髪もパッツンです。
父親はどんどん腕を上げて上手に切ってくれるようになったのですが、幼稚園児くらいの写真を見るとものの見事にパッツンになっていたのを思い出します。
すべてはバリカンのせいです。
◆ ポイント5 ◆ 画期的発明 「スキカル」「スキカット」
確実に犠牲者をパッツンにしてしまう家庭用バリカンの世界でしたが、ナショナル「スキカル」の登場で、「梳く(すく)」ことが可能になりました。
刃を部分的にカバーして切れなくすることで、「長いまま」の髪と「短くする」髪をちょっとだけ分別できるようになったのです。
これで「完全パッツン」から「おおよそパッツン」へと進化しました。
ナショナル・パナソニックと並んで比較的歴史が長い「テスコム」製のバリカンも名称が「スキカット」になっており、同等の機能があります。
そのため、現在では多くのバリカンに「スキ」機能がついています。(ボウズ用バリカンなど、ついていないものもあります)
(ER-GF81/71/41に付属のスキ刈りアタッチメントとER-GS40のスキ刈りスライド)
※ロゼンスター CB-211にはスキ機能はない OEM製品で、ほぼおなじものである貝印のKK-0228には、スキ刈りアタッチメントがさらに1個ついています。
スキ機能の登場で、わずかに切り口を自然にぼかしたり、ボリュームだけを減らす用途に使うことができるようになりました。
理美容師さんは、この用途には「スキバサミ」を使いますから、バリカンにスキ機能を求めていません。なので業務用バリカンには、スキ機能がないもののほうが多いと思います。しらんけど。
けれど、ど素人の僕たち私たちには必須の機能と言えるでしょう。
◆ ポイント6 ◆ 画期的発明 ナショナルスポーツ刈りコーム
さて、ほとんど一般かいわいでは知られていないものの、現代の技術のベースになっているすごい発明がありました。それがナショナルバリカン向けに開発されたスポーツ刈りコームです。
スポーツ刈りというのは、私が子供のころから流行しだした、前髪だけやや長い丸刈りみたいなものです。後ろはガッツリ刈り上げられているけれど、前髪はちょろっと長めに生えている、というスタイルでした。
この製品、ようするに「何もしないと刈られてしまうので、大きな櫛を当てて隠しておくことで、その部分が刈られてしまわないようにしよう」という発想です。
めっちゃ大きく「マスキング」するような感じですね。
ただ、この段階では「コームからはみ出した部分の毛をバリカンで切る」という形になっています。
ところが、それを逆転させたさらなる発展系が生まれたのです。
それがPanasonicの「スライドアタッチメント」という、比較的近年に生まれた器具です。
(2009年発売のER5209あたりでしょうか)
写真は ER-GF80 に付属のスライドアタッチメントです。Panasonicでは、70㎜まで対応のアタッチメント、40㎜まで対応のアタッチメントを販売しており、どこまでの長さのものがついてくるかで、機種名が違います。
◆ ER-GF81 ER-GF80 ER5209 70㎜まで
◆ ER-GF71 ER-GF70 ER5208 40㎜まで
(そのほか、吸い込み機能がついたER511などは80㎜まで可能です)
この機能がどうすごいかというと、完全に「刈ることを放棄している」からです。「70㎜、80㎜までは絶対にそれ以下に切らせない」という堅い決意がにじみ出ています。
しかし、切れてしまうことを徹底的に防ぐのですから、ある意味理にかなっています。
みなさんは美容師さんが↑の図のようなことをしているのを覚えていると思いますが、髪を櫛で持ち上げて、そこからはみ出したところだけをわずかに切ってゆく技術が、美容師のワザですよね。
よーく図を見ると、スライドアタッチメントを使うと、70㎜、80㎜まで「髪が残る」わけですから、擬似的におなじことをできているのがわかると思います。
そう!この長いアタッチメントは、理美容師のワザを、素人でもできるように開発されているのです。
そうすると、「切り過ぎない」「刈り過ぎない」「切ってしまわない」ところから徐々に髪を減らしてゆくためには、 「長いアタッチメント」の力が役立つというわけなのです!
長いアタッチメントを持つ機種では、最初は「長いの」から始めて、ブロックごとに「段々短いの」に付け替えるように勧めています。
最初にガッツリやっちまっても、70㎜は確保されているので、それほど恐ろしい目には合いません。だからど素人でも、失敗が少ないのですね。
<まとめ>
さて、いよいよ結論です。70㎜などの長いアタッチメントをつけている機種はそれほど多くありません。
2022年の現行機種では、
Panasonic ER-GF81
Panasonic ER511
と
テスコム TC470
の3つだけです。
ちょっと前まではイズミ(現在マクセルイズミ)が
などを出していて、それに70㎜アタッチメントが付属していたのですが、現行品になってからはありません。
もちろん、70㎜ではなく、40㎜まででよければ、パナソニック・テスコム製があり、また35㎜まででよければマクセルイズミ製があります。
ちなみに頭頂部を40㎜くらいでカットすると、短髪の時のベッカムくらいになります。
今回私が買ったのは上の写真に出てきている3機種ですが、オススメはやはり
Panasonic ER-GF81
一択です。
ナショナルホームバリカン時代から、次々に新しい進化アタッチメントを開発しており、アホでも最低限それなりに見られるカットができるようになっています。
「スキ刈り」の進化版で、さらにあまり刈らない「ナチュラルアタッチメント」もあります。
(それくらいなら、もう最初から刈るなよ、というツッコミはやめてね)
このアタッチメントは、耳まわりだけに特化した「耳まわりアタッチメント」にもなります。
ナチュラルアタッチメントだけで、ボリューム落としもできちゃう優れもので、なおかつ耳まわりも、一回あたりが「ほとんど刈れない」ので、何度でも修正が利きます。
(もはや、「刈れない」のが ”善で正義” みたいになってる)
というわけで、一回の動きで「切れてしまわない」ことがいかに重要かわかってもらえたと思いますが、まあ、騙されたと思ってパナのカットモードを買ってみてください。
ぜったい「切れすぎない」のをお約束いたします。
☆ 業界では第一位「パナソニック」が独壇場、二位・三位を「テスコム」「イズミ」が競っているようですが、個人的に使ったことがある経験では
「テスコム製は、刃のユニット内部に割れが生じる」
ことが起きました。今は解消されているのかわかりませんが、その情報はかなり有名です。
いっぽうのイズミ製は、「切れない」というレビューがかなり多く、(どうも刃の取り付け設計に問題があるのか)、使いづらい体験談が多いようです。
価格は多少高いですが、panasonic製は、そうした不満はほぼないので、まずは王道を購入なさることをお勧めします。