2022年2月5日土曜日

セルフカットには2種類の意味がある! ~切れないバリカンがレビューに上がるのはなぜ?~

 



  こんにちは

 バリカン選びとセルフカットについて考えるシリーズも、第四回です。

 

 さて、バリカンのしくみや、メーカー・シリーズ別による性能や傾向を比較してゆくなかで、「売り手と買い手の間に、どうしても誤解や意見のすれ違いが生まれる」という ことがわかってきました。

 このすれ違いや溝は、意外に大きく、そのためにバリカン本体に対する評価も正反対になってしまう、ということが起きています。


 そこで、今回は


 ◆ セルフカットには2種類の意味がある

 ◆ 切れないバリカンがレビューに上がるのはなぜか?


といったあたりを解明してゆきましょう。

 

 第一回で、「バリカンとは切れちゃうものである」ということを書きましたが、そもそもこの時点で、大きな2つの方向性が生まれるわけです。

 

 それは、「切れてしまったほうがいいユーザー」と「切れてしまっては困るユーザー」です。

 

 たとえば、理美容師さんがバリカンを使うのであれば、取り回しやカットの技術は腕がカバーしますから、「切れてしまったほうがいい」ということになります。

 

 あるいは、「丸刈りやボウズ、スキンヘッド、ごく短い刈上げ」などを好む人は、シュンシュンバリバリ切れる機種を望むことでしょう。

 

 しかし、一般的なお子さんをカットしようとするママや、やや長髪ベースの髪型や、後ろ髪をわずかでも垂らしたい人は「切れてしまっては困る」ので、徐々に少しずつカットできることを望むわけです。

 

 ですから

 

「セルフカットはこうするんだよ!」「セルフカット向きのバリカンはこれだ!」

 

といったネットの記事があっても、読者は

 

「ああ、自然な髪型ができるんだな」

「ああ、カリッカリの刈上げができるんだな」

 

と自分に都合のいい読み取り方しかしません。

 

 けれど、もし、そのバリカンの使い方や機種の傾向が真逆だったら、どちらの人にとっても悲惨なことになってしまいます。

 

 だから「パッツンになった!」「切れすぎて丸坊主にしないといけなくなった」「全然切れない!」「よく切れる!」といったバラバラの感想やレビューが飛び出してくることになるわけです。

 

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 なので「セルフカット」には、2つの意味があり、あなたはどちらの意味でイメージしているかをまず選択する必要があると思います。

 

A)  カリッカリ、ツルッツル、シャキッシャキに刈り上げたい。ボウズにしたい、俊敏に尖らせたい!

 

B)  自然でふんわり、あれ?散髪いったの?くらいで押さえたい。パッツンは嫌だ!

 

 

このどちらの意味で「セルフカット」したいのか、それによって選ぶ機種が変わってくるわけですね。



 たとえば、Panasonicさんのサイトでは、AとBのどちらをイメージしているかで、ラインナップが違います。他社さんでは、バリエーションも少ないので、そこまで分けていません。


A) シャキシャキ向け

https://panasonic.jp/mens/products/hair.html


B) ふんわり向け

https://panasonic.jp/haircut/


 Aの方は、めちゃくちゃ男性向けで、それもガッツリボウズや刈上げしたい人向けに開発されているので、20㎜くらいの短髪までしか対応せず、しかし、刃は俊敏に切れて値段も高い、という傾向があります。


Bの方は、家庭用全般で、アタッチメントで極力髪を多く残して「少しずつ減らす」ことを主眼においています。バリカン性能は、Aよりも「ふつう」レベルに落としています。


 しかし、お互いの領域はカブっていたり、また使い方が重なる部分があるので、厳密明確にきっちり分かれているのはマズいため、うまーくそこはボカして表現してあります。

 

 たとえば、私が望むセルフカットは、

 

Bの「ボリュームが出てきてしまったところだけを減らしたり、伸びすぎたところを短くして、今の髪型を延命したい」

 

というものです。

 ↑の写真は、今日の私のサイド部分ですが、「おおむね、真ん中で分けられるくらいの長髪」をイメージしていただければと思います。


 実は、この写真の髪型、昨日あるバリカンで切ったばかりです。パッとみると、何もしていないように見えると思いますが、

 

◆ 何もしておらずこの髪長さなら、本来はもっともみあげ部分が乱雑に伸びている。

◆ 本来ならもっと耳にかかってくる毛が増えている

 

はずなのに、実はボリュームが減少しているのです。

 

  実際には、昨日風呂場で、サイドから後ろ、えり足などにかけて、「一回だけ丁寧にバリカンをかけている」のが正解で、それは


 

 

 このPanasonic ER-GS40 の25ミリ長だけをつかって刈っているわけです。


 ほんとうはこの機種では、スソに向かって15ミリ、5ミリといった具合に段階的に短くしてゆくと、なめらかに刈り落としてゆけるのですが、それをあえてせずに25ミリだけで放置すると

 

「カットに行っていないように、現状維持っぽく見せることができる」


という使い方ができるのです。(このあと、もみあげとかはもうちょびっとだけ揃えたいですがね)

 

 けれど、人によってはこれを見て

 

「全然切れてないじゃん!」

「全然刈れないじゃん!」

 

という印象を抱く人もいます。それはもしかしたら半分半分くらい、人によってイメージが真逆なのかもしれません。

 

 

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 さて、amazonさんのレビューなどをみていると、「全然刈れない」「虎刈りになる」といった話がときおり見られます。


 それらは特定の機種に多い傾向があるのですが、構造的、設計的に問題があるものもあれば、違った理由のものもあると思います。

 

 構造的にクレームが多い機種は、実際に購入して検証していないのでなんともいえませんが、写真から判断すると「バリカンが頭に当たる角度が、直角をイメージして設計している」ものが評価が低いように思います。

 

 バリカンを頭に当てる時に、「45度くらいの斜め下から差し入れる」イメージが普通だと思いますが、設計によっては「曲面に対して直角に刃を差し入れる」ことを要求する機種がたまにあります。

(アタッチメントも、それにあわせて角度が浅かったり、深かったりするので、おおむね判別できます)

 

 以前にこのシリーズでお伝えした「上から下ろしてカットする」タイプなどは、完全に直角要求ですが、下から刈り上げるのに、設計角度が直角に近い機種が存在するのです。

 

★その後、電器店で実物を確認してきました。レビュー評価が低い機種も、通常の好評化の機種も、本体についている刃の角度はほぼ同じで、違いはありませんでした。

  しかし、アタッチメントが実際に頭皮に当たる角度に違いがあり、

 ◆ 好評価の機種は、刃の角度とアタッチメント角度がほぼ同一

 ◆ 低評価の機種は、刃の角度よりアタッチメント角度が直角に近い

 ことがわかりました。このあたりが関係しているかもしれません。

 

  また、おなじメーカーで、基本的にはそのメーカーの機種は「刃の切れ味」については定評があるのに、なぜか一部の機種だけトラブルが多いものが見つかりました。

 

 その機種は、刃の横幅は他とあまり変わらないのに、ボディの全幅をあきらかにコンパクトに作っているために、刈った髪が刃の隙間やアタッチメントとの隙間に挟まりやすい、という点がありそうです。

 

 刃の幅はほぼ同じなので、切れ具合は一緒なのだけれど、刈られた髪がどこへ逃げて落ちるかが問題だというわけです。

 

 本体幅が広いと、同量の髪が挟まろうとしても、逃げて落ちる確率が高まりますが、本体幅が狭いと、その面積におなじ量の髪が密集して残りますから、バラけて落ちてくれません。

 だから結果的に「髪が詰まって切れない」となるわけですね。

 

 

  また、本来であれば「ガッツリ刈れる機種」「プロ向け機種」と「ちょびちょび刈れる機種」は設計思想が違うのですが、「ちょびちょび刈れる機種」で、つるつるのボウズやバリバリの刈上げを一気にしようとすると、毛がつまったりパワー不足で「虎刈りになるじゃん!」「ぜんぜん刈れないじゃん!」という感想になってしまうこともあると思います。

 

 そういう方は、各メーカーのラインナップの中でも「上位機種」「プロ向け機種」を選んだほうがよいのかもしれません。

 

 考え方としては、「刃から上の毛量、毛の長さがどれくらいあるのか」がその分かれ目です。

 

  稲作をイメージしてほしいのですが、稲穂が伸びていて、その穂先だけを刈るエネルギーと、根元から全部買って刈り株だけが残るエネルギーとはぜんぜんちがうことがわかると思います。

 

 コンバインは、根こそぎ刈って行きますが、当然パワーが必要で、かつ、刈られた長い稲の茎をさばく技術が必要です。

 

 同じように、長い毛量、長い毛足を一気に刈ろうとすると、「髪先をちょっとずつ刈る」設計になっている機種では、「毛の束をさばくこともできないし、深刈りすることも苦手」ということが起きます。

 

 言われてみれば当たり前の話ですが、ネットのレビューでは「よく切れる」「ぜんぜん切れない」という2つのボキャブラリーしか出てこないので、判別がしにくいということになるでしょう。

 

 

 けれど、今回お話したように

 

「自分はつるつるにしたいのか」「ふわふわにしたいのか」

 

という目線でレビューや機種別説明を読めば、メーカーが伝えようとしている意味も読み解けてくると思います。

 

 ご参考になさってください。

 

 

 





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