2019年3月14日木曜日

【たのしい裁判入門】 第1話「山田太郎を追え~見えないあいつをカーチェイス~」最終回



(このシリーズは、事実を元ネタにしたフィクションです。ちょっくら、いろいろいじくってありますのでご了承ください)


さあ、夜逃げ屋本舗山田太郎氏が行方をくらませてから、ボクがなんとか最後の住所をつきとめたところまでが前回のお話(^^

そして、どうやら、山田氏はもうそこにはおらず、何度か調査しても住んでいる気配がない、ということで、裁判所に調査報告書を上げたところから今回のお話です。


さて。

”たのしい裁判入門 ちょこっと解説シリーズ2”
http://blogs.yahoo.co.jp/nensyu_300/5677198.html

でもお話しましたが、裁判をしたり、取り下げるときには「相手にもその事実がきちんと伝わる」ことが大切なわけで。そこで、裁判の書類なんかを送り届けることを「送達」と言って、簡単にいえば「めっちゃハイレベルなVIP待遇の郵便」みたいなもんなのよ、ということでしたね。

ところが、今回のように「山田太郎が逃げてしまっていない」とか「そもそも、トラブルになっていた相手が偽名だったらしく、どこにいるのかもよくわからない!」など、いろんな事情で「相手に裁判に関わる書類が届けられない」という事情がある場合は、どうするのか。

警察の刑事事件なんかでは「被疑者不詳のまま、書類送検」なんて言葉がニュースで出てきたりしますが、おなじように、民事事件でも相手がいなくても「手続きが進められる」ように実は、ちゃんと制度ができているのです。

それが、「公示送達」という制度で、簡単に言えば、「山田太郎、出ておいで!こうやってみんなの前にあなたの名前を晒しておくので、気付いたら裁判所に申し出てね!」という張り紙を裁判所の掲示板に張っておくのです。

やり方も原始的です。ほんまに裁判所の前の掲示板に、2週間晒すのです(笑)。で、2週間たって、なんの音沙汰もなければ「もうこれで、あなたに送達したのと、おんなじなんだからね!」と強制的に送達したことになっちゃいます。

今回のように「裁判取り下げ」の案件だったら、相手もそんな話「気付かなくても」なんの文句もないでしょうが、訴えられる側だったら、ちょっと怖いですね。

「え!そんなん聞いてないよ!ちょっと行方をくらませて仙人生活してただけじゃん!」とか

「え!そんなの知らないよ、ちょっとホームレスしてただけじゃん!」

とかでも、ダメです。そんなこんなでもし、裁判になっていることも知らずに、当日ももちろん欠席して、100%負け裁判になって判決まで下りちゃっても、もう文句言えないのです。(いちおう、理屈上はそうなります)


というわけで、無事?山田太郎氏の訴訟については、「取り下げ」ができ、預託していたお金も返してもらうことができました。

具体的な手続きは、なんせ裁判所や法務局にいろいろ書類を書いて出さねばならないのですが、まあ、そのへんは流れ作業です。事務官の方に教えてもらいながら、ちゃっちゃか、ちゃっちゃか書き上げて、すんなりOKをもらいました。

こうしてボクの探偵ゴッコ&裁判所デビューは、なんとか無事に終了したわけですが・・・。

「というわけで、社長!かくかくしかじかでうまく行きました!」と完了を社長と喜び合っていると、社長が

「で、だな・・・。」と声を潜めます。

「な、なんでしょうか?」

「いやあ、吉家くん!君の今回のすばらしい働きに感謝して、お願いしたい仕事があるんだよ!もちろん!わたしも全面的に協力するが、いや、前面に立たなきゃならないのは私なんだが、ちょっとばかり実務的に力をかしてくれんかな?」

な、なんだろう。全面的に給料アップとかなら、とっても嬉しいのですけど・・・。


「これこれ、これだよ。いまのうちの売掛で未納になったまま未解決ファイル行きになっている迷宮入り事件があってだね・・・」


「・・・。ようするに、お金を払ってくれていないお客さんがまだまだいるんですね」


「さすがだな、名推理だ!いよっ!名探偵!」


「で、どうするんですか?この入社してまもないボクに、土下座してお金を回収して回って来いとおっしゃられるなら、しがないサラリーマンである吉家は、さからう術もございません」


「いや、いや、これらの顧客はそんなヤワじゃないツワモノぞろいだ。集金に行って払ってくれたとしても、1回につき千円、2千円では話にならん、そこでだ!」


じゃじゃーん!という効果音がついてそうな勢いで、社長が言います。

「裁判しよう!!!!」

・・・。

「マジですか?裁判とかほら、お金かかったり弁護士に頼んだり、時間かかったりするじゃないですか!」

・・・説得力ないなあ。今回、お金もかからんかったし、弁護士もいらんし、10年ほっといた山田太郎を数日で処理したようなもんだからさ。


「いやいやいや。140万円までなら簡易裁判所扱いで、弁護士いらんし、ワシのハンコと決裁があれば訴訟もできるし、君と私でやれば、仕事の合間にちょこちょこっとだね・・・」


・・・そんなこと言い出すと思ったぜ。まったくう!


まあ、社長にしてみれば、探偵ゴッコはともかく、実務的な文書をちゃっちゃか、ちゃっちゃかとボクが書いてしまったのを見ていた、のが良かったのか悪かったのか!弁護士も司法書士もいらん!こいつがいれば、ある程度までの訴訟はこなせる!と思ったのでしょう。

ええ、ありがたき光栄。


というわけで、今度は素人弁護士になりそうな吉家孝太郎と社長のタッグで、「民事裁判」を本格的にスタートすることになりました。

いよいよここからが「楽しい裁判入門」の本編になったりしてね!(^^






次回、「たのしい裁判入門 支払い催促はボクの仕事、支払い督促は裁判所の仕事 の巻」おたのしみに!

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