第一章 あなたが生きているということ
”人生”ってなんだろう。自分の”人生”はこれからどうなるんだろう。”人生”をより良く生きるためには、どうしたらいいんだろう。
そんな疑問は、全ての人が持っています。あなたのような高校生は、これから自分の進路を決めてゆかねばならないので、余計にそんな疑問を抱くことでしょう。
もちろん、高校生になる前から、人生について考える人もいるし、もう少し遅い時期に、それを考え始める人もいるでしょう。でも、人は誰でも、自分の人生について考えることになる、というのは共通だと思います。
そこで、まずはじめに、”あなたが今ここに生きている”ということについて、おさらいをしておきたいと思います。
あなたは今、高校生としてこの日本で生活し、生きています。しかし、それは当たり前で当然のことではありません。
というのも「世界には195もの国」があり、その中でも2014年現在で「世界で3番目にお金を稼いでいる国」に生まれるということは、ベタないい方をすれば『当たりかはずれ』でいえば確実に『当たり』だからです。
お金持ちの国に生まれるのか、貧しい国に生まれるのかは、スタートの段階で大きな違いです。
あなたがどの国に生まれるのかは、人生ゲームのルーレットのように偶然に決まるものだとしましょう。だとすれば、あなたの人生は、生まれた時点でかなりラッキーなものだったと言えるのです。
生まれてからも、試練は続きます。
生まれたばかりの赤ちゃんが亡くなる確率は、日本では1000人に1人で、世界でもっとも低い死亡率の国のうちのひとつです。
世界で最も乳児死亡率が高い国は、2010年の時点ではソマリアで、1000人のうち52人が亡くなっています。
世界を平均すると1000人のうち23人が亡くなるという数字になります。
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もう少し興味深い話をしましょう。
あなたは今、生まれて確かにこの世界に存在していますが、すこし時期がずれていたら、もしかすると「生まれている」ということさえなかったかもしれません。
あなたは生まれているけれど、これからはあなたと同じように誰かが生まれるとは限りません。
私は、戦後の第二次ベビーブームという時代に生まれました。なので、簡単に言えば、「タメ」「同い年」である同級生がたくさんいた、ということです。
私の父や母は、第一次ベビーブームという時代に生まれています。なので、私たちよりもっと多くの同級生がいた、ということになります。
(ちなみに、第一次ベビーブームの出生数は1949年の269万6638人、第二次ベビーブームの出生数は1973年の209万1983人がピークです)
あなたの年代、今の高校生が生まれた頃の出生数は約102万人です。ということは、あなたの同級生は、私の同級生にくらべて半分しか「生まれてくることができなかった」という考え方をすることもできますね。
同じことを別の見方で見てみましょう。私のお父さん、お母さんが生まれてきたときは、きょうだいの数が自分も含めて平均で4.5人もいました。
それが、あなたの年代では、きょうだいの数はあなたも含めて約1.3人しかいないことになります。
これが、いわゆる「少子化」ということなのですが、少子化がもっと進めば、(つまりきょうだいの数があなたを含めて1を下回れば)「あなたは生まれてこない」という時代がやってくるということです。
そうなると、このお話もこの段階でジ・エンドですね。生まれてこない人に、この文章は読めません。残念。
冗談のように書いていますが、これは真面目な話です。私のお父さんとお母さんは、結婚して私を生みました。私も結婚してこどもを授かりましたが、今の男性の生涯未婚率は20%です。
つまり、あなたが結婚する確率は5分の4であり、あなたの同級生のうち5人に1人は結婚しないので子孫が生まれない、ということになるわけです。
あなたはなんとか生まれてきましたが、あなたの子孫が続く保証はない、ということです。
とりあえず、「お、僕が私が生まれてきたのは、どちらかと言えばラッキーだったのかな」くらいに思ってくれれば、まずはOKです。
ちなみに、この文章を読んでいる人たちの中には「自分は生まれてこないほうが良かった」と感じている人がいるかもしれません。
そういう人は、「この国に、今生まれてこないほうが良かった」のと、もしかしたら「貧しい国や戦争状態の国に生まれてきてしまった」のとどちらがマシだったか考えてみてください。
たいていの人は、「内戦状態の国に生まれてしまった」とか「難民キャンプで生まれてしまった」とか、「生まれたけれど数週間で死んだ」とかよりは、ちょっとだけ今のあなたの境遇のほうがマシそうだと思うと思います。
そうです。たぶん、きっとおそらく、今のあなたの境遇は世界の中でもマシなほうなのです。それがどんなに辛い境遇だったとしても。
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