2014年10月10日金曜日

【高校生のための”人生”の教科書06】人生を決めるのは誰か

 前回の説明で、あなたの体の中に流れている遺伝子やDNAが、あなたの苗字と大きく離れていることをお話しました。


 それでも、あなたは現在の苗字を名乗らなくてはいけないし、結婚してさらに子孫に伝達するか、あるいは配偶者の苗字を名乗るか、ということになるわけです。


 これも「既に決まっていてどうしようもないこと」のひとつです。私たちは自由な社会の中で生活しているようで、そうではないこともあるという一例ですね。


 ところで、なぜ「苗字」の話をしたのでしょうか。それはあなたの「家」(家族)に関することだからです。


 この文章は「人生に関する教科書」ですが、実はあなたが生まれる前までは、「人生」というのは自分で決めるものではなく「家・家族・家父長・家柄」によって決められていた時代が長くありました。


 あなたは自分の人生をあなた自身で決めるチャンスがありますが、あなたの先祖の大半は、自分で決めることができない人生を送っていたようなのです。もういちど、あなたの先祖を確認してみましょう。


 あなた・お父さん(お母さん)・おじいさん・ひいおじいさん・ひいひいおじいさん・ひいひいひいおじいさん・ひいひいひいひいおじいさん


 これで、あなたを合わせておなじ苗字の7代の家系を拾い出しました。ちょっとずつ、あなたの先祖の人生をタイムスリップして見てみましょう。


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 あなたのお父さんは、あなたから見て「おじいさん」が土地を持っていたかいなかったか、によって人生を大きく変えられています。


 あなたのおじいさんも、同じように「ひいおじいさん」が土地を持っていたかいなかったか、によって人生が変わっていました。


 まあ、基本的にみーんなそうなので、ちょっと違う視点も混ぜてみましょうね。


 あなたのお父さんの世代は、前にも少し話しましたが同級生がやたらたくさんいた世代なので、「常に競争」が起こっていました。
 進学するにも、就職するにも競争だったので、いい学校・いい会社に入れた人とそうでない人がたくさん分かれました。
 この頃には既に、都会と田舎がはっきりわかれており、大きい会社はみな都会に出来ていたので、人々はサラリーマンになるべく大勢都会に出てゆきました。
 つまり、基本的には都会の人口が増えて、田舎の人口が減る動きが起こっていた、ということです。




 あなたのおじいさんの世代も、基本的にはお父さんの時代と似ています。人口が多く、田舎から都会へ、という動きも同じです。ところが、大きく違うのは、あなたのおじいさんの世代の少し前まで、日本は戦争をしていて、そして負けたということです。


 日本は焼け野原で、なーんにもなく、社会はボロボロでした。そこから、日本人はいろんなものを作って、外国へ商品を売って、経済的に発展したわけですが、なぜそれが出来たかといえば、日本がボロボロで賃金も安かったからです。


 ちなみに、あなたのお父さんが就職してはじめてもらった給料は、18万円くらいだったはずですが、おじいさんが就職してはじめてもらった給料は3万円くらいでした。


 3万円が18万円になるくらい、この間に日本は経済成長をしたのですが、逆の言い方をすれば、賃金が3万円で安かったので、世界中から仕事が舞い込んだということでもあります。


 ついこの間まで、中国や韓国といったアジアの国は賃金が安かったので、給料が高くなってしまった日本から仕事がどんどんなくなりました。まあ、今はそんな状況です。


 給料が3万円から18万ということは6倍です。おとうさんとおじいさんの世代の違いで6倍もお金が増えるのであれば、おとうさんの給料に比べてあなたは18×6=108万、初任給は108万円もらわなくては割がありませんね。


 でも、それは確実にムリです。あはは、笑うしかありません。


 

 あなたのひいおじいさんの時代は、戦争中でした。戦争中なので、「人生をこうしたい」とか「ああしたい」とか自由はありませんでした。多くの人は徴兵されて、海外で戦わされて、死にました。人生もクソもなかった時代を、とにかくありとあらゆる手段で生き延びたのが、あなたのおじいさんの時代だったのです。




 あなたのひいひいおじいさんの時代は、江戸時代から明治に切り替わり、戦争へと日本が突き進んだ時代でした。この頃は、人生を決めるのは常に「その家のお父さん」でした。家父長制度と言いますが、一族の中で「お父さん」が常になんでも決める決定権を持っており、子供達はそれに従うのが当り前だったのです。親が「こうしろ」と決めたことは、その通りしなくてはなりません。そういう意味では、ひいひいおじいさんの人生を決めたのは「ひいひいひいおじいさん」だったかもしれませんね。



 そこから先は江戸時代です。人生は家柄で決まっていました。武士の子は武士になるように育てられ、農家の子は農家になるように、商人の子は商人として基本的に育ちました。自由はあまりありません。




 こうして見てゆくと「人生について悩むチャンスがある」のはせいぜいあなたを含めて3世代くらいしかないことがよくわかることでしょう。
 

 「自分で人生を決める」ことができたのは、おとうさんとあなたくらいのもので、それ以外の時代の人たちは、ある程度周りによって決められていたり、焼け野原から立ち上がったり、と苦労の連続だったのです。


 自由である、ということは、素晴らしいことです。しかし、反面この世界から「ほったらかしにされる」ということでもあります。「何をしてもいいよ。何を選んでもいいよ」ということは「好きにすれば?あんたなんかどうでもいいよ」ということとすごく似ています。紙一重、と言ってよいくらいです。


 なので、あなたがこれから人生を過ごしてゆくに当たっては、あなたの先祖たちの誰よりも自由であるがゆえに、「しっかり考えないと、ほったらかしにされる」ということでもあるのです。これは、とても怖いことです。



 こういうことを知っておいてほしいので、私はこの教科書を書いているわけです。
 






 

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