2014年10月23日木曜日

【高校生のための”人生”の教科書17】あなたの進路の選び方

 この章では、高校生にとっての「学校」に関するお話を集めながらまとめてきましたが、最後に「進路」について説明しておきたいと思います。


 戦前までの日本人の「学生から卒業しての進路」については、個人の意見よりも「親の意見」や「家の仕事」など、ある程度他の人から指針を示され、それに従ってゆく人生を選ぶ人が多かったのですが、現在はそうではありません。


 世代で言えば、あなたのおじいさんぐらいの世代から(つまり、戦後生まれの世代から)、「自由に仕事や進路を選んでもいいよ」と言われることが多くなり、またそのように人生を送ってきた人が増加しました。


 みなさんの世代では「自分が何になりたいか」を考えることは、当たり前のことであるかのような教育を受けてきたと思います。「何になれるか」は誰にもわからないのですが、とりあえず「何になりたいか、という希望くらいは、聞いてもらえる」ようになりました。




 高校生活の3年間で、人はみな「何になりたいか、そのためにどんな進路を選べばよいのか」というチョイスをさせられるようになります。早い人だと、商業高校や工業高校などに入学することで、すでにおおまかなチョイスを済ませている人もいるでしょう。


 そのとき、将来の「職業別」で進路を決定させることが、これまで多くの学校で行われてきました。「家を建てる建築家になりたいので、そういう大学や学校に行く」とか、「弁護士や検事を目指して、法学部に行く」とか、「音楽で食べてゆきたいので、芸術の学校に行く」とか、そういう選択方法です。


 それも一つのチョイスの方法ですが、みなさんに知っておいてほしいのは、上のような「職業」の希望で進路を選ぶ時代は、そろそろ破綻するということです。


 職業を選ぶことができるというのは、「どの職業に行っても、とりあえずお金をある程度稼ぐことができる」という前提に立っています。平たく言えば、まあ食っていける、ということです。


 ところが、既にそうなりつつありますが、「お金を稼ぐこと」と「職業選択」がいろいろな意味で合致しなくなってきているので、考え方を改めなくてはいけなくなっているのです。



「弁護士」でも食える人と食えない人が出てきている。「大学の先生」でも貧富の差が激しい。「音楽で食べて行ける」のは、ほんのほんの一握り。
 おなじ労働をしていても、正社員と派遣では、給与も待遇も違う。などなど。




 そのため、みなさんが大人になる頃には、「どんな仕事をしているか」ということと同時に、「今、そして未来に食えているか、食えるのか」ということが重要になっていると断言できます。


 つまり、発想を大きく変えて、「自分は食っていくために、どうするのか」ということを、早いうちから考える必要があるというわけです。


 食える音楽家になるにはどうしたらいいのか。

 食えるサラリーマンになるにはどうしたらいいのか。

 食えるためには、どの道へいけばいいのか。


 たとえば、音楽家で考えてみます。
 食える音楽家になるには、もしかしたら今ネットで何か曲を発表してみることがスタートになるかもしれません。
 日本中のオーケストラの団員が何人くらいで、あなたはせめて全国の楽器奏者のうち「何番」くらいになれば雇ってもらえそうか調べておくのも悪くないでしょう。
 音楽の先生になるか、あるいは音楽教室の先生になって食っていくのか。それにはどれくらいの「イス取りゲームのイスがあるのか」を知っておくとよいでしょう。
 

 もっともっと調べるべきことはありそうですね。つまり、こういうことです。「進路」とは大学を選ぶことではなく、大学卒業後の出口と、あなたが死ぬまでの食べていく方法を考えることでもあるのです。


 個人的な話をすれば、私が高校の時「なりたかった職業」は、現在では食べてゆける職業ではなくなっています。ですから、私はその仕事についていません。


 もちろん、ほんの一握りの人は、その職業で食べていっていますが、食べてゆける人数の順位に、私のレベルではなかなか入れないことも、気付いてしまいました(苦笑)


 なので、私は、まったく違う分野の仕事を本業にして、副業で「なりたかった仕事」をしています。

 お金を稼ぐ金額は、本業とは雲泥の差がありますが、副業のほうの「なりたかった仕事」は半分趣味と実益を兼ねてやっていますので「やりたかった仕事」ができてとても嬉しい気持ちです。


 ただ、嬉しい気持ちだけでは、私もあなたも食べてゆけないのです。残念ながら。


 私は、いくつもの名前を使い分けて活動していますので、本業以外にそうした「副業」のようなものをたくさん同時にやっています。吉家孝太郎、という名前はそのうちのたった一つです。




 そういう意味では、みなさんの人生はちょっと明るい希望に満ちているかもしれません。「職業」と「食べてゆくこと」が切り離れている生活が当たり前になれば、あなたは「なりたかった仕事」「やりたかった仕事」を(本業ではなく)、自由にチョイスできるようになることでもあるからです。


 多岐に渡る仕事の内容を、それぞれの分野で時間を分けて関わることができるならば、それは幸せなことかもしれません。


 本業はサラリーマンで、趣味で絵を書いていてそれがネットでお金になったり、あるいは依頼されてイラストを書いて報酬をもらう、とかそういうことは既に当たり前になりつつあります。


 私の知っているある人は、ふだんは鬼瓦を作るメーカーで働いていて、別に個人としてアニメのフィギュアの原型を作って東京の会社に提供している人がいます。


 彼なんかは、いちおう同じジャンルで活動しているほうですが、別にジャンルが違っていても全然かまわないわけです。


 私は今このブログなど、文筆を中心にこの名前では活動していますが、別の名前では音楽家でもあります。




 3年間という長いようで短い期間に、ぜひあなたの進路のその先で「食べてゆく方法」を考えてみてください。時間はたっぷりありますが、あっという間にその日はやってきます。
 

 

 追伸:女性のみなさんへ


 女性の場合は、以前にもお話しましたが20代から30代の約10年~15年の間という短い期間に、妊娠と出産をどうするのか、ということが大きく関わります。


 ですので、あなたの進路のその先に、「結婚はしてもしなくてもいいけれど、妊娠と出産はどうスケジュールに組み込むか」をずっと頭の片隅に置いておくことが重要です。


 こどもの世話をするのは、男性にもできますが、妊娠と出産は女性にしかできません。ですから子育てのことはパートナーと協力するにしても、安全で健康的に妊娠できる期間については、忘れてはいけないことです。



 ですから重ねて言いますが、女性のみなさんにとっても「なりたい職業」も大切ですが、「自分がどう生きて、妊娠出産の期間の前にどんな仕事に就くのか、そして子育て後にどんな仕事をするのか」という長いスパンの目線が必要なのです。



 現代を生きている女性で、「どんな仕事に就くのか、どんな仕事をするのか」だけを見て職業選択をしてしまい、妊娠と出産の適齢期を逃して後悔している方がたくさんいます。


 彼女たちは、当時このブログを見られなかったし、誰もそんなアドバイスをしてくれなかったので、そうなってしまいました。


 みなさんには、事前に警告することができます。妊娠と出産をどうしたいか、はとても大切なテーマです。


 後で後悔するくらいなら、今のうちに考えておくと良いと思います。

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