2014年10月9日木曜日

【高校生のための”人生”の教科書05】あなたのお父さんのお父さん・・・は

 前回のお話の最後に、「これまでに起きてしまったことはしょうがない」みたいなことを言ったと思います。


 あなたは今の両親のもとに生まれてきてしまい、あなたは今の土地に住まざるを得ず、あなたは今の容姿で、あなたは今の能力を持っています。


 この世界で生きてゆく上で、どうしようもないことというのはたくさんあります。なぜ、それがどうしようもないのかは、「一つは土地のせいだ」ということもこれまでにお話しました。


 では、今回は、「あなたの人生」を考えるに当たって、あなたの先祖はどうやって生きてきたのかを考えてみたいと思います。彼らは、一応あなたにとっては「人生の先輩」です。どんな人であっても「あなたが過ごすかもしれない、人生の先例」となることは確かです。


 ですので、ここからはあなたのお父さんのお父さんの、そのまたお父さんの・・・。という視点でお話したいと思います。



==========


 ちょっとまって!どうして「お父さん」なの?「お母さんのお母さんの、そのまたお母さんの・・・。」でもいいじゃない!と女子のみなさんは怒り出すかもしれませんね。


 もちろん、その通りです。お父さんとお母さんがいなければ、あなたは存在しません。現代の世界の科学技術では、まだ「男性」もしくは「女性」の片側だけで子孫を増やすことはできていません。


 家族として一緒に生活している「お父さん、お母さん」はいない人もいるかもしれませんが、生物学的には、かならず父親と母親は存在する、というのがヒトの生態です。


 参考までにお話しますが、今これを読んでいるあなたは、必ず絶対確実に「何万年もこの世界の争いや災いや事件や変動の中で、生き残ってきたものすごい幸運の持ち主」であることは確かです。


 意味がわかりますか?たいていの人は、そんなことに気付きません。


 あなたが今これを読んでいるということは、あなたの一族の中で、あなたに繋がる家系が「第二次世界大戦を生き延びた」ということです。もし、あなたに繋がる誰かが戦争で死んでいたら、あなたは生まれていないからです。


 あなたが今これを読んでいるということは、あなたに繋がる誰かが「関東大震災に巻き込まれて死ななかった」ということです。「江戸時代の飢饉で飢え死にしなかった」ということです。
 「富士山の噴火で死ななかった」とか「戦国時代に戦いで死ななかった」とか、そういうことでもあります。


 そうです。あなたに繋がる誰かは、常に「死ななかった」のです。たくさんの人が争いや自然災害で死んでゆく中、あなたに繋がる誰かは「なんとか生き残った」のだということを覚えておきましょう。


 もっと言えば、あなたの先祖は「氷河期でも死ななかった」し「恐竜が絶滅しても、あなたの先祖になった生き物は絶滅しなかった」のです。


 もっともっと言えば、「地球に生命が生まれた時から、あなたの先祖の誰かはほんのわずか生き延びた生き物の中にいた」ということです。


 あなたは、地球上の生命誕生から、ずっとずっと「死ななかった小さな集団」の末裔です。


 あなたは、超ラッキーボーイ!もしくは超ラッキーガール!なのです。実は。



==========


 少子化が進んで、「生まれてくる可能性がない人たち」というのが今後増えることは、以前にもお話しました。あなたの同級生の中で、「結婚できない」とか「子孫を残せない」人たちがかなりの確率で存在することをお話しました。


 その人たちは、これまでのラッキー歴史が、そこでストップです。何万年ものラッキーは、いよいよそこでおしまいで、もうその人たちの子孫は、この文章を読むことはできません。残念。


 しかし、あなたは今の自分の人生がそこまで「ラッキー」だとはまだ思えないでしょう。せいぜい、普通か、あるいは「自分はいろいろ苦しんでいる」と思っていることだと思います。


 それはそれで大丈夫。オールオッケーです。人生のうちで高校生の時ほど苦悩する期間はありません。私もそうでしたし、きっと私の父もそうでしたし、私の祖父もそうだったでしょうから。


 ところで、話がかなり脱線しましたね。お父さんの話でした。お父さんだけではなく、お母さんももちろん大事なので、両親というものの話をしたのでした。


 ですが、あえてここはお父さんに絞ります。なぜか?それは、今これを読んでいるあなたが日本人・日本国籍だと仮定して、そしてほとんどすべての人に「苗字・姓」がついていると思うからです。


 あなたが外国から来た人であれば、ごめんなさい。少しの間、日本の仕組みを説明するので、付き合ってくださいね。


 ちなみに、あなたには「姓・苗字」がない、かもしれません。ほんのわずかですが、これを読んでいるあなたが皇族であるならば、一般の日本人についているような苗字がないからです。その場合は、この文章を読まずとも、人生はあらかた周囲のいろんな人の圧力で決められてしまうでしょうから、むしろ読まないほうが幸せかもしれません。



==========


 あなたにはどんな苗字がついていますか?


 日本人の場合、あなたの苗字はあなたのお父さんが継承して、その苗字になっていることが多いと思います。もちろん、お母さんが苗字を継ぐこともありますが、その一世代上ではお父さんが継いでいるなど、基本はお父さんを通して継承されることが大半です。


 あなたの一族がずっと、お母さんのお母さんのそのまたお母さんの苗字を受け継いでいるとしたら、ちょっと珍しいかもしれません。


 どうして苗字の話をするのか。


 それは、あなたの名前はいよいよあなたの生活に不具合があったり、問題続きだったりしたら「あなたの自由意思で変える方法がある」のに対して、あなたの苗字は基本的には「変えることができない」からです。


 (名前は、家庭裁判所の改名手続きによって変えることができます。)


 苗字というのは、あなたがあなたの家族というグループに属していることの証として使われます。一般的には、「あなたのお父さんの家のグループ」に属することを示すために、あなたの苗字はお父さんの苗字と一緒になります。



 歴史をたどれば、明治8(1875)年に「平民苗字必称義務令」という命令が出て、日本人は全員苗字を名乗ることになりました。ということは、あなたの苗字は2014年現在で最低139年遡ることができる、というわけです。


 (もっと昔から苗字を名乗ることを許されていた人たちもいますが、それは江戸時代の身分制度にかかわることなので、ここではスルーしておきましょう)


 あなたの苗字が「佐藤」さんであると仮にしましょう。現在高校生のあなたのお父さんは40歳から50歳ぐらいかもしれません。あなたのおじいさんは、仮に当時の人が25歳前後で子どもを作ったとすれば、65歳から75歳くらいになる、ということですね。


 139年をこの考え方で割ってゆくとどうなるでしょう。


 40+25+25+25+25+25=140ですから、「おとうさん」「おじいさん」「ひいおじいさん」「ひいひいおじいさん」「ひいひいひいおじいさん」「ひいひいひいひいおじいさん」ぐらいの時から、あなたの一族は「佐藤」さんだということになります。


 この最後の「ひいひいひいひいおじいさん」を仮にご先祖ですので「先蔵(せんぞう)」さんだったとします。(親父ギャグです)


 明治に「佐藤先蔵」を名乗ったあなたのご先祖がいました。この人を初代とするとあなたは7代目になります。


 あなたはもちろん、佐藤○○くん、佐藤○○さんですから、立派な佐藤家の一員であり、佐藤家の子孫です。あなたは何の疑いもなく自分は佐藤くん、佐藤さんだと思っているはずです。


 
 ところが、実はおかしなことが起こっているのです。


 それはどういうことか?


 先蔵さんには奥さんがいて、子供ができます。その人にも奥さんがいて子供ができます。つまり、血縁・DNA的にはつながりは半分になるということを、もしかしたら中学校の理科の時間で習ったかもしれません。


 あなたは7代目ですから、先蔵さんの遺伝子・DNAをどれくらい受け継いでいるかといえば、半分が7回ですから、1/2を7回くり返した数字になります。


 それは、1/32ですので、パーセントに直せば3..125%という数字です。


 3.125%って何?どういうこと?


 と、あなたはまだピンと来てないかもしれませんね。あなたの遺伝子のうち3%だけが佐藤さんの遺伝子で、残り97%は他の家の人の遺伝子だということです。


 つまり、あなたの体の97%は佐藤さんじゃないのに、あなたは「佐藤さん」を名乗っているということです。すごいでしょ?!


 これが、日本で暮らし、日本人であるということの一側面なのです。あなたはすでに「ほとんど佐藤じゃない体なのに佐藤に支配されている」わけです。嫌な言い方をすれば。


 あなたが何も疑わず「佐藤だれそれ」として生きているとすれば、実はあなたの人生の中身の大半は「佐藤じゃなかったんだ!」ということなのです。


 

0 件のコメント:

コメントを投稿