2018年11月6日火曜日
【資本主義をハックする 13】 顧客満足度の終わりと、「提供者満足度」のスタート
ハンドメイドが流行したり、自分でいろいろなものと手作りして、なおかつ販売しようという機運が高まっている昨今ですが、どうやらツイッターなんかをみていると
「手作り品が高い!」
と、作者に対して文句を言ってくる人たち、という存在があるようで、話題になっています。
私も別の名義で手作り品を販売したりしていますが、この手作りの概念というのは、とても難しくて、たとえば小さなアクセサリーなんかでは
「このアクセが8000円」
という価格提示があったとして、
「高い!」
という反応をする人と
「そりゃそれくらいするよ!」
という反応をする人に大きく真っ二つに分かれるのは理解できます。
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人があるものに対して「高い」と感じるか「安い、もしくは妥当だ」と感じるかは、その基準となる
「ふだん購入しているもの、ふだん目にしている情報」
によります。
100円均一とか、せいぜい500円程度の雑貨を見慣れている人からすれば、8000円のアクセサリーは高いと感じるのは、ある意味においてはいたし方ありません。
しかし、自分でモノづくりをしていたり、あるいは高級手作りブランド品を知っている人からすれば、「安いなあ!」とは言わないにしても「妥当だな」くらいの感想に落ち着くのではないでしょうか。
たとえばランドセル。高級品であれば10万円。普及価格帯でも5万円くらいは平気でします。しかし、イオンの最安値は8800円くらいからあります。
さて、手作りで本皮を使ってランドセルを作る場合、どれくらいなら納得できる価格でしょうか。
ランドセルがピンとこないなら、本皮の手さげバッグや、クラッチバッグならどうでしょう。
このあたりは自問自答なさってみると面白いと思います。
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さて、資本主義社会、商業主義社会の中で、これまでは「生産者と消費者」というものが明確に別れていましたが、これからの社会は、メイカームーブメントなどに限らず、もう少し
「提供者(生産者・販売者)と消費者の垣根が低くなったり、その差が薄くなったりしてゆく」
時代がやってくると思います。
そうすると、資本主義をハックするという観点では、このすり合わせや、合致点・妥協点を見出すことも、重要になってきます。
ということは、これまで企業の活動においては
「顧客満足を追求し、顧客満足度を上げる」
ということが第一義のように叫ばれてきましたが、あなたもわたしも提供者になるのですから、
「提供者満足とは何かを考え、提供者満足度も上げる」
必要が出てくることに気付くわけです。
ツイッターの例ではないですが、8000円のアクセサリを作っている作家さんに対して
「それでは高い!どう考えても材料費は1000円くらいだ」
と言ってくる一般者が存在するわけですから、
「じゃあ、3000円でなら買おう」
「いや8000円じゃなきゃ、よそへどうぞ」
というせめぎあいが、これからはどんどん増えてゆくであろうし、それもまた商取引そのものなのだということになるかもしれません。
(オークションは、こういう機能を持っています)
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アクセサリを提供している、提供者から見れば、自分の作品が1000円呼ばわりされたり、3000円しか評価されないことは不快です。満足感はありません。
しかし、仮に、心持ちお値打ちで7500円だったらどうですか?と一般のお客さんに言われたとしても、そこまで不快にはならないでしょう。
満足度はやや下がるかもしれませんが、それはある一定の枠内に収まっていると考えても差し支えないでしょう。
この「提供者満足」という考え方は、実は資本主義の「スポットライトを当ててこなかった、重要な側面」だと思います。
これまでは「顧客満足」だけにスポットライトが当たっていましたが、実は資本主義には、かならず「提供者満足」という側面が存在しているのです。
それは、労働者が、「いくらの賃金で働き、またどのような処遇や境遇で働くことができるか」という観点です。
労働組合華やかなりし頃は、労働運動という形でこのことにスポットライトが当たっていましたが、どうしてもそれだと共産的な
「搾取する資本家と搾取される労働者」
の文脈で語られてしまうのでわかりにくかったかもしれません。
しかし、これからのように提供者と消費者が個人間で繋がるような事例が増えてくれば
「提供者満足と、顧客満足は、均衡が取れる地点でこそ成立するものである」
ということに、だんだんとスポットライトが当たるようになるでしょう。
このことが多くの人に理解されるようになると、「労働力の提供」とはなんであるか、がもっとはっきりしてくるのではないか、と思います。
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資本主義ハッカーの観点から、この「提供者満足と顧客満足の話」を解析すると、いくつかのポイントがみえてきます。
<ハッキングポイント その1>
『 提供者満足は、どこに存在するのか。
材料費と手間にかかった費用はコストであるから、提供者の作品であるという価値は、もしかすると利益にこそ存在する、という仮説が立てられるかもしれない。
そうすると、提供者の利益は、どのくらいであれば、顧客の満足度とつりあうのだろうか、という問いが立てられる。
仮に利益が20%~30%のあたりが、常識的な提供者満足の源泉だとすれば、手作り品を紹介したり、店舗のように販売できるサイトに登録した場合の手数料が20%~30%あるとすれば、提供者満足度は、恐ろしいことに仲介サイトにまるごと搾取されることになる
だとすれば、提供者満足と顧客満足の均衡点は、個人売り対個人買いでこそ成立するのだろうか』
↑ たとえば、こんな考え方で読み解いてゆく方法もありそうですね。
<ハッキングポイント その2>
『 手作り品販売サイトにしても、手数料が取られ、あるいは、労働者として雇用されても、利益分は会社に取られるのだとすれば、
「直販直取引こそが、提供者満足が最大になり、かつ顧客満足も最大になる方法かもしれない」
と考えられる。一部の自営業者が「下請けから、直販に舵を切り替える」というのは、まさにこのことを指しているのであって、労働者も実は「労働者から企業家へ」という流れがもっとも提供者満足が上げられる方法なのではないか 』
↑ こんな風に考えはじめると、労働そのものの意味づけも変わってきますね。
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今回は、試論のような形で「提供者満足」という言葉を作ってみましたが、実はこれが「ワークライフバランス」とか「働き方改革」とか、そういうものの
コア・核の部分
なのではないかな、と思います。
このあたりをしっかり読み解いてゆくことで、資本主義をうまく立ち回るためのハッキング方法が見えてくるような気がします。
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