ここ2回ばかりの記事で、学校におけるさまざまな事象を取り上げてみましたが、今日もかなり濃い内容でお届けしようと思います。
モンスターペアレントなんて言葉が流行するように、学校と保護者の関係は、いろいろな問題や課題をはらんでいることがなんとなく予想できますが、今回はそこに切り込んでみます。
教師とは?そして保護者とは?ということを、あるモデルケースを例に問い直してみましょう。
まずは、以下のお話を読んでください。
==========
Aさんという人が、公立学校の教師として採用され、22歳の春から晴れてとある学校で働きはじめたとします。
このAさん、彼の場合もあるし、彼女の場合もあるでしょう。しかし、その男女の性差については、もう少し後で分岐させることにしましょう。
Aさんは最初の勤務校に放り込まれます。大抵の場合は、都市部ではなく郡部であったり、比較的大きい市の教育委員会に所属する学校の場合でも、学級数の小さい周辺部の学校に勤務することになるでしょう。
Aさんは4年あるいは5年程度その学校に勤務し、次にもう少しだけ大きい学校か、あるいは地域の離れた別の学校に赴任することになるでしょう。
2つめの学校でも5年程度勤務すれば、Aさんは32歳前後になっている、というわけです。
さて、ここらあたりで、最初の分岐点が現れますね。Aさんが男性でも女性でも、25歳頃から35歳くらいを迎えるにあたって
結婚
についてどうするか考え始めることになるわけです。とくに女性の場合は、その後に控える妊娠出産を見越して、いろんなことを考えなくてはいけないわけです。
では、まずはここから先、男性の動きを見てみましょう。
30歳前後で結婚した男性教師の場合、子供が10歳を迎える40歳までの間に、かならず1回の転勤を経験します。多い人だと2回の場合もあるでしょう。これで、新卒から数えて3校めから4校め、というわけです。
教師のこどもは、親が転勤すればこどもも必然的に転校せざるを得ません。親がもし5校めに異動すれば、小中の間に2回の転校を経験するわけです。
しかし、多くの教師はこうした転校をこどもにさせません。ナゼカ?!
教育内容や教育課程について熟知している教師は、こどもを転校させると教わる内容が分断され、こどもの学習にあまりよい影響がないことをわかっているからです。そのため、生涯で1度の転校くらいはどこかでやむなしと思っても、自分の赴任に合わせて何度もこどもを転校させることはしないのです。
じゃあ、一体どうするのか!!!!
ここから先は、男性教師の本音が如実に現れる行動をとります。
30代から40代の転勤の間で、男性教師は「ここぞ」と思った都市部、大規模校への赴任がかなうとその場所に
家を買う
のです。わかりやすくいいましょう。兵庫県であれば、(県職員の場合)神戸市・宝塚市・芦屋市・西宮市・姫路市といった都市部に赴任したらチャンスです。あるいは郡部であっても地域の中核となるような市町村に赴任する時期を見計らって家を買ってしまうのです。
そこから後は、どこへ異動させられても男性教師のみが単身赴任をしたり、遠距離通勤をして対応します。
こうすることで、自分のこどもには、もっとも条件がよい環境で学習が行えるように人生設計するわけです。
あとは都市部の私学一貫校に入れようが、公立トップ校に入れようがかまいませんが、少なくとも「奥さんとこどもの住環境は、よいところに置く」というのがマストなのです。
一方、今度はAさんが女性の場合を考えてみましょう。女性の場合はいろんなパターンがあります。
職場結婚などをして夫もおなじ教師である場合、二人は「近いとも言えないが遠くはない距離」に引き離されます。同じ学校での勤務はありえません。
このこと自体は、こどもが生まれるまではたいした問題ではありません。どちらかが、ちょっと遠距離通勤するだけです。
こどもを妊娠するとどうなるでしょうか?Aさんは産休と育休で1年間は最低学校現場からいなくなります。
育休は延長がかけられますから、数年間(無給ですが)教師として籍だけを置くことは可能です。
志ある女性だと、育休延長の間にまた出産(二人め)をかまして長期に休んだりします。1年間出てきたけどまた休むの?なんてこともあります。
普通の民間企業だと、その間の他の社員への負担等が増えるので、「育休社員ママ」に対しての非難たるやごうごうたるものがありますが、学校ではそんな嫌な顔はされません。
なぜなら校長の権限で「育休代替要員」をちゃんと引っ張ってこれるからで、その分の人事上の手当てもきちんとなされるからです。
(学校にAママ先生の籍はありますが、過剰人員を配置する(加配)ことで、もう一人臨時講師を雇えることになります)
もう、すごい人だと産休と育休をかまして、「所属校でほとんど仕事をしないまま、次の勤務校にて復帰」という人もいます。
さすがにここまでやると「厚かましい女だ」と思われるので、みなさんそこそこで思いとどめますが、でもよく考えてみてください。
「少子化を止めるには3人生まないとだめだけれど、3人女性教師が生むためには足掛け10年くらい学校に出たり休んだりしないと無理」
ということにはすぐ気づくでしょう。
なので、女性教師は、こどもをあきらめるか、もし3人こどもが生みたい場合はどこかで退職を選択することになります。
また、こうした「厚かましいとも思える」人生設計を強行できないおとなしい女の先生は、ずるずると普通に勤務しているうちにすぐに40歳近くを迎えてしまうわけです。
==========
以上のことをまとめると、良き教師であるかどうかは別にして、良き父母でいるためには、
「夫は都市部への転勤を狙って暗躍し(つまり、そういうところへ引っ張ってもらえるように管理職とのパイプ作りをし)、妻は産休と育休を計画的につかいまくる」
ということができないとダメだ、ということがわかるでしょう。
教師としての「志(こころざし)」はどうあれ、公務員たるもの、どこへでも身を粉にして飛んでいきますという理想はどうあれ、
自分のこどもの出産・育児・学習生活を天秤にかけると
誰もが悩まざるを得ないのです。
こういう視点は、これまでの学校問題分析ではほとんど着目されてきませんでした。教師としての資質がどうのとか、不適切教師がどうのとか、保護者との協力がどうのとか、表面はいろいろナゾられているものの、
管理職はどういう異動をさせられるのか、一般教師はどうなのか、管理職試験を受けるとは何を犠牲にすることなのか
などなど、そうした側面はノーカウントになっていることが実は問題なのではないでしょうか?
民間企業の場合は、出世することや異動するさせられることについては、左遷でない限りはそれ相応の「利益」をともなうものですが、教師の場合は異動における「利益」というのは金銭的にはほとんど担保されません。
平たくいえば、年寄りの一般教師と管理職がもらえる給与にそれほど差がない、ということです。管理職加算が、いわゆる学校における責任をとらされ具合と見合っていないので、管理職になりたくないという教師も増えているわけです。
=========
一般企業の場合、部長級1000万、課長級800万、係長600万、平社員400万だとしましょう。
ふつうの中小企業では、定年近い平社員の場合、多少の年功加算はあれども基本的には58歳でも年収500万程度です。
ところが教師の場合は、校長900万、教頭800万、おなじ年齢の平教師 700万ですから、順当に年をくってれば、まあそこそこ貰えるわけです。
また、どことは言いませんが、成績別給与にもからくりがあって、本当にまじめにA先生は特A評定、B先生はA評定、C先生はB評定なんてやっているところもありますが、次のような裏技を使う場合もあるので要注意なのです。
2015年度は、A先生が頑張っていたので特A評定。
2016年度は、B先生が頑張っていたので特A評定。
2017年度は、C先生が頑張っていたので特A評定。
わかりますね?こうやって順繰りに誰かを「頑張ったで賞」で評価してゆけば、最終的にはみんな平等にお金をもらえる、という
越後屋、おぬしも悪よのう
というシステムです!!!
==========
さて、長々書きましたが、今日の結論。学校はシステムで動いています。そして、教師たる者、ちょっと裏をめくれば一人のわがままな人間に過ぎません。
そうした普通の人たちの集合体が、学校というシステムで動いている以上、教科書通りに美しい世界が運営されるわけではない、ということを覚えておく必要があります。
0 件のコメント:
コメントを投稿