2015年10月23日金曜日

横浜「傾斜マンション」が教えてくれた”マンションという資産”の幻想 ~ビックリ!分譲マンションはあなたのものではなかった~!~

 日に日に大変な状況になっている横浜の「傾きマンション」こと施工不良物件ですが、起こってしまったことは時間を元に戻せないので、いずれは何らかの方法で


「手打ち、解決」


をせざるを得ないことは目に見えています。


 さて、TVのニュースなどでは住人の方が今回の問題で


「資産価値が下がる」


と繰り返し口にされておられますが、建て替えするにしても補償するにしても、なにせ住民の合意がまとまるのだろうか、というあたりが問題になっています。


 ヨシイエ的には何度も前ブログ・このブログで書いていますが、そもそも


「マンションは資産ではない」

し、また

「マンションはあなたのものではない」

と連呼し続けています。



 事実、今回のようなマンション問題が表面化すると、


「マンションが負債であり、重荷となる」

し、また

「住民の一定の合意が得られなければ何もできない」

ことが痛感されてしまうわけです。



 面白いことに、今回旭化成建材は、


「自社が関わった建築物の実際の名前を公表しない」


ということを決めました。


 報道的には「なんでやねん!なんで隠蔽するねん!」とつい思ってしまいますが、実際その建物に住んでいたり関わりがある人からすれば、「公表された瞬間に資産価値がゼロになる(売れない)」という切実な問題があるので、この判断はとりいそぎ良しとされているようです。



 逆に、「じゃあ怪しいかもしれないのに、それを隠して販売し利益を得たり、重要事項説明をせずに売るのはどうなんだ!」とツッコミが入るかもしれませんが、「知らなかったのだから仕方がない」で逃げ切ることも可能になるわけで、このあたりはたいへんに



 気持ちが悪い、気色悪い、ああ、大人っていやだ



な対応が現実に起きてしまうのです。


 神様にとっての正義と、マンション所有者にとっての正義はどうやら反するようですね(苦笑)



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 さて、ここでビックリ!な事実をみなさんにご紹介しておきましょう。


 マンションを買ったら、あなたのものだ。マンションはわたしの所有物だ。


とみなさんは思っていると思いますが、それは幻想かもしれません。



 というのも、昭和37年までは、マンションはあなたのものではなかったからです。


 今から53年前のことなので、現在53歳以上の人は


「マンションが自分のものではなかった時代」


を生きていたことになります。



 所有権、というのは、人類の歴史の中でもかなり古い概念ですが、「これはボクのもの」「これはわたしのもの」というのは社会生活において基本の考え方です。


 歴史的には、この概念をめぐっていろんな争いや議論が起きて、たとえば「奴隷という所有物がなくなった」とか、「逆にすべて国家のものとするように変えた」とか、多様なパターンが生まれました。



 しかし、その中でもマンションの所有権は、たった53年しか歴史がなく、まだまだ「法整備が未整備な分野」であることがわかります。


 ちなみに、マンションの区分所有という考え方ができる以前は、「全員一致の共有財産」でした。


 あなたのもの、ではなく、みんなのもの、だったのです。



 それが、全員一致でものごとを決める体制から5分の4などの合意形成が可能になりましたが、よくよく考えてみれば


 5分の4であっても、意思統一なんてほとんどできっこない


ことは誰でも気付きます。


 マンションに住んでいる人は、その無理難題をなんとか解決すべく、どこも苦闘しているわけです。



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 もしマンションが真の意味で区分所有であれば、5分の4とか関係なく


「各戸は個別に、自分が望むとおりの対応を実施できる」


はずです。法的には。だって区分に応じてちゃんと所有しているのだから。


 「オレの部屋だけ建て替えてくれ」とか「オレの部屋はそのままでいいからお金をください」とか、それらの全てが満たされてこそ、



 区分所有という概念が実行できる



ということになります。



 ところが、現実には建築筐体はひとつであり、別々の施策を取ることは物理的に不可能です。従って、


区分所有ということを真の意味で実現することは、物理的に不可能


だと証明されることになります。



 ということは、現在の区分所有は


「全員共有のうち、限定行為について議決・決定権を有する」


だけである、ということがわかってくると思います。




 しかし、それではマンションは売れません。



「このマンションをお買い上げになられると、みんなのものだけれど、あなたの部屋の部分だけについてくる権利を行使できますよ」


と言ってしまうと、


「なんだ、ゴルフの会員権みたいなもんだな」


と気付かれてしまいます。(実はそうなんです。会員権も売れるし、資産価値はあるからね)



 ゴルフ場がけしてあなたのものでないのと同じで、マンションはけしてあなたのものではないのです。



 ごめんなさいね。ほんとうのことを言うと怒り出す人もおられるでしょうけれど。





☆参考にしたい記事☆

 『区分所有権を「所有権」とはよべなくなった日』 日経アーキテクチャ
 http://kenplatz.nikkeibp.co.jp/article/knp/column/20100714/542316/








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