2015年10月17日土曜日

傾斜マンションだけじゃない?!建築業界に潜む「まっとうな闇」

 横浜で話題になっている「傾斜マンション」。不十分なくい打ちでマンションが傾き始めたのは、硬い岩盤まで基礎が到達していないという根本的な原因があったそうですが、以前の「姉葉耐震偽装問題」といい、欠陥マンションはつぎつぎ登場のようです。


 施工にあたった旭化成といえば、これまた先日の堤防決壊で「流されなかった白い家」としてへーベルハウスが話題になったばかりですが、その高い評価も


 そもそもちゃんと施工していなかったら、話になりません


ですな。


 ==========


 そもそも建築業界は、元請けから下請けに仕事が流れてゆく中で、強烈な値下げ・コスト圧力がかかることで有名です。

 今回の事件も、販売元の三井ではなく、実工事を担当した旭化成子会社の責任、ということになっていますが、やったのはそうだとしても、そうなるように仕向けられた背景というものが隠れているだろうことは想像に難くありません。




 ハインリッヒの法則


なるものをご存知でしょうか?

 これは、1つの事件や事故には、そこにつながる300の小さなミスや事故、ヒヤリハットが隠れているというものです。



 これは保険料の設定にもかかわる重要な要素で、最新の研究では、300どころか、


重大事故1に対して、ニアミス600(バードの法則)

重大事故1に対して、ニアミス400(タイ=ピアソン)


もの小さい欠陥が隠れているとのこと!


 ようするに、マンション一棟あたり、数百のミスや瑕疵、ちょっと動いたら外れるとか切れるとか、ボルトが緩むとかそういうのが隠れているということになるわけです。



==========

 なんでそういうことになるのか?という究極の問いについては、建築業界の端くれにいるヨシイエからすれば、


 それで当たり前、当然。


という部分も相当あります。なので、そのからくりを説明しましょう。




 もし仮に、職人さんたちが全くミスをせず、問題なく部品をすべて加工取り付けして、完璧な状態でマンションや住宅を仕上げたとします。


 この完璧なマンション・住宅が「まったく問題なく、トラブルを起こさない期間が何年になるか」想像できますでしょうか??


 ふつうの人の感覚だと、2~30年はせめて持ちこたえてくれそう、と思うかもしれませんが、正式な答えは



 たった10年間



だけです。


 なぜか?私は建築業界の隅っこにいますので、いろんな部材・部品・構造物のカタログを持っています。

 それらのカタログをめくっていて、メーカーがそれらの部材のトラブルに対して、「問題を起こさない想定耐用年数」なるものを定めているのですが、そのうち「部材の保証ができる期間」は、ほぼすべての部材が10年以下だからです。


 いいですか?建築に使われる建材から小さなパッキン、ネジに至るまで、基本的にはメーカーは30年も使われることを保証してはいないのです。


「30~40年くらいは使われるだろうな」


ということは、頭ではわかっています。しかし性能的にそれは保証できないので、


「適切な期間の間にメンテナンスをしてくだいさいね」


という但し書きをカタログにつけて出荷している、ということなのです。


 ということは、10年たってパッキンやシーリング材が劣化したとしましょう。そこから水が入って、思わぬところに重大トラブルを起こすかもしれないわけです。

 金属てすりひとつにしてもそうです。適切な塗装をしていなければ、10年から先は、錆びて折れても仕方ないのです。




逆に言えば、施工する者からすれば、


「10年持ちこたえる施工をすれば、そこから後はメンテナンスする人間の仕事である」


と大手を振って言えることになります。


「大丈夫大丈夫、10年くらい持つし、そのときは『自然劣化です』とでも言っときゃいいんだって」


というのが、完璧な施工をした場合でも、職人さんのある種の本音なわけです。だって、そこから後の交換やメンテの仕事は、自分の仕事ではないからです。


 覚えておきたいのは、マンションの構造コンクリートは50年から100年持つ、と言われていても、その他の部材はすべて10年持つことしか補償されていない、という事実です。

 そこには大きなギャップがあるのです。



==========


 さて、ところが世の中には、建築部材のうち「20年補償」とか「30年補償」みたいなことを謳っている製品が実際に存在します。


 ところが、よくよく話を聞いてみると、それは「ひっかけ問題・なぞなぞとんち」レベルなのです。


 たとえば、ここに30年補償で100万円分の外装材があるとしましょう。


「この材料で建築した屋根壁は30年補償ですから安心ですよ!」

とセールスマンは売って回りますが、その部材を使ったおうちが、29年後に屋根に亀裂が生じて雨漏りしたと考えてください。


 さて、おうちの方はどんな補償をしてもらえるでしょうか、という問題です。



<回答A> 30年保証なので、外装材代の100万円と、そのやり直し施工費100万円の合計200万円くらいは出してもらえる。


<回答B> 30年保証なので、外装材代の100万円分は出してもらえるが、やり直し施工費は自己負担になる。


<回答C> 3万3千300円くらい、貰える。



 はい!賢いと思われる、たいていの人は回答Bが正解だと思うでしょう。回答Aほど世間はやさしくないし、回答Cは意味不明だからです。


 しかし、答え、正解は


 回答C


です!!!


 どういうことかわかりますか? たいていの場合、こうした長期に渡る保証・補償は


残存補償


というスタイルになっていることが多いのです。 残存補償とは、30年なら30年分つかったでしょ?残った分は補償しますよ、ということです。


 車のリースで、残存価格付きリースというのが流行していますね?あれと一緒です。


 なので上の例の場合、本来なら傾斜がついた残存金額になりますが、今回は例題なのであえて均等割りにして、


 100万÷30年=3.3333・・・


 29年持ちこたえたので、残存補償額は3万3千円、となるわけです。(それも部材のみ、ね)



==========

 こうした理由で、私ヨシイエは現在2件の一戸建て不動産を所有していますが、マンションや集合住宅には絶対に手を出しません。


 なぜなら、10年でどこかしらメンテしなくてはならないとわかっているのだったら、自分の意思・意図・タイミングで手当てができる一戸建てしか不可能だからです。


 マンション管理組合の全体の合意とか、ヨシイエには意味不明です。 自分のことくらい、自分で決めないと、不動産の管理・メンテなんてできないことがわかっているのですから!!







0 件のコメント:

コメントを投稿