2015年7月2日木曜日

<実国学を考える 12> 資本主義はなぜ崩壊するのか ~ギリシャ破綻の意味~

 つぶれるつぶれると言われていたギリシャが、いよいよ財政的に破綻してしまいました。おまけに、そのニュースの陰に隠れて、アメリカ自治領のプエルトリコまでがデフォルト寸前とあっては、セカイの誰もが



 資本主義っていったいどうなってるんだ?このシステムはいよいよ終わりなのか?



と戦慄したことでしょう。



 誰もが恐れおののく理由は簡単です。先進国のほとんど全てが、大小の差はあれ借金漬けになっており、ご存知のとおり日本だってアメリカだって、EUだってものすごい債務を負っているわけで、


「あるいは、自分たちもギリシャの二の舞になるのではないか?」


という恐怖を抱いて過ごしているからに他なりません。



 というわけで、いよいよ存在そのものが怪しくなってきた資本主義がなぜ崩壊するのか、そのシステムをヨシイエ流で


サルでもわかる資本主義の滅び方


としてまとめてみたいと思います。




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<1>資本主義の3つの基本原理

 資本主義の基本は「てこの原理」です。てこの原理の作用を、英語ではレバレッジと言ったりしますが、経済用語のレバレッジは

「少ない金で大きな金を動かすこと」

ですから、これから話す意味合いとは少し違います。ここでは、本来のてこの作用を思い起こしながら読んでくださいね。


 小さい力が大きく作用すること、それがてこの原理です。




 ■ 安く仕入れて高く売る(生産のレバレッジ)

 資本主義の基本その1は、上記のとおり、安く仕入れて高く売ることです。原価が安くて、高い値で売れば残る利益が大きくなるので、すべての資本主義はこの行動パターンを目指しています。

 そのために、資本主義は

 ☆労働者を安い賃金でこきつかう
 ☆機械生産を取り入れて、生産効率を上げる
 ☆海外の安い材料を仕入れる

といったことを繰り返してきました。これらのことは、後で述べる資本主義の歴史とも関係してきます。



 ■ より広く、より多くの人に売る(販売のレバレッジ)

 資本主義の基本その2は、たくさんの人に売ることです。一つの製作者からたくさんの人にむけて発信し、販売できることで利益が大きくなるので、これも資本主義が目指している行動パターンだといえます。

 そのために資本主義は

 ☆大量生産し、大量販売をする
 ☆大いに宣伝し、広告し購入してもらう
 ☆市場を拡大するために地域を広げ、海外にまで出てゆく

ということを繰り返します。これもまた、資本主義がとった歴史の動きとも連動していますので、お忘れなく。



 ■ 儲けと利子が乗っかる(利潤のレバレッジ)

 資本主義が結局何をめざしているかと言えば、「資本の増加」です。資本金100円が1000円になり、10000円になることをめざしています。

 そうすると、ここにひとつのブロッコリーがあるとして、そのブロッコリーを100円で仕入れて120円で売るとすれば、20円勝手に何かが増えていることになりますね。

 経済学的にはそれは利益と呼ばれますが(いわゆる儲け)、見方を変えれば本来100円の価値のものが120円という価値肥大を起こしていると見ることができます。

 あるいは、そのブロッコリーをカードで買えば、1ヵ月後のカード精算の際には、130円くらい支払うことになります。

 金融というシステムを使うと、利益のほかに利子までが乗っかるわけですから、さらなる価値肥大を生みます。

 こうして本来100円の価値だったものが、130円にまで肥大化するわけです。






<2>資本主義の3つの歴史

 上の資本主義の基本原理は、そっくりそのまま「諸国の歴史」として現れてきました。なので、ここんとこ数百年の世界の歴史と連動させながら考えてみましょう。



■ 19世紀 ~産業革命と帝国主義の章~

 もし産業革命がなかったら、資本主義は存在しなかったかもしれません。つまり、当時は蒸気でしたが、機械化によって「大量に何かを生産する」ということが可能になったので、資本主義が生まれてきたわけです。


 そう!さっきお話した「生産のレバレッジ」が資本主義の最初の基盤となりました。


 こうして、大量にモノを作り、売るというところからはじまった資本主義は、利益の最大化を求めて「安く仕入れる」ことを目指すようになります。そのため、外国に攻めていって植民地化し、労働力と原材料を安くゲットすることに力を入れるようになりました。これが帝国主義として全世界に蔓延し、武力が世界を支配するようになります。




■ 20世紀 ~”先進国”と”途上国”の章~

 そもそも、植民地は武力で奪っていましたので、各国は潜在的に戦争大好きモードになっています。そんなときに国同士の利害衝突が起きれば戦争でカタをつけてしまうのは当然です。
 そして2度の世界大戦が起き、その後は冷戦という形で緊張状態が続きます。

 戦後、資本主義・産業化を推し進めていた国々は、先進国として活躍し始め、あることに気付きます。「いままで搾取する相手として植民地を見ていたけれど、今度は商品を売りつける相手にすればもっともっと販売量が増えるに違いない!」と。

 そこで、植民地政策が取れなくなると、今度は途上国にあの手この手で「買わせる体制」を作るようにもってゆくことになりました。そのテクニックとして「共産主義を排除する」とか「独裁を認めて言うことを聞かす」とか「独立させて買手として育てる」などが蔓延します。

 またもう一つのことに気付きました。「別に植民地にしなくても、海外の安い賃金で労働力だけ使えばいいじゃん」と。「資源だって安く買い付ければいいんだから、植民地として抱えなくてもいいじゃん」と。


 こうして、戦後は「形の変わった植民地政策」として「先進国と途上国」という関係が出来上がり、大戦後しばらくはこの形で落ち着いていました。




■ 21世紀 ~グローバル資本主義と金融工学の章~

 ところが、当初予想していなかったいくつかの問題が浮上しはじめます。

 一つは、「これまで安く買い付けたり、安い労働力だと思っていた途上国が経済力をつけてきた」こと。

(でもまあ、これは購買力が上がって買い手が増えることでもあるので、まあいっかとなっている)


もう一つは、「債権債務という形で、精算を先延ばしにしていたものが、膨れ上がってきた」こと、です。


 そうです。先進国は「金を借りる」「金を貸す」「リスクを金に変換する」「利子を証券化する」などのさまざまな理屈=金融工学を駆使して、


 現金を使わず、債権で経済を回す


ということを大々的にはじめてしまったわけです。

 この最後の金融経済は、次の項目でもう少し丁寧に解説してみます。




<3>金融経済というモンスター

 モノを売る、買うということの繰り返しだけであれば、資本主義がいくら価値肥大を起こすとしてもそれほど問題にはならなかったかもしれません。


 しかし、金融システム・金融工学・金融経済という「金の貸し借りの世界」「国をまたいだ金のやりとりの世界」が発展したことで、モンスターのように何かが巨大化していることは事実です。


 これは、貨幣価値の違う国家間でお金のやり取りをする「為替」の発達や、利子を取ってお金の精算時期をずらす「金融」の発達と連動しています。


 それらが発達するなかで、たとえば「Aという国は実力があるからリスクが少ないのでお金の価値をこれくらいに計算しよう」とか、「Bという国は力がないので利子をたくさん払わないとお金を貸してくれない」とか、ややこしいことを全部お金に換算するようになりました。


 これは、一見論理的でスマートですが、実は馬券のオッズとおなじでバクチです。


 みなさんの大好きなFXがバクチであるように、為替と金融はバクチと化し、いろいろな経済問題を引き起こすようになったわけです。



 それよりも根本的な問題は、やはり「先進国が金融というモンスターを飼いならしていると思っていたのが、実は噛み付かれている」ということだと思います。


 もっと平たく言えば「今、先金借りていい暮らしをし過ぎている」だけなのですが。



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 さて、ここまでの話はざっくりと資本主義の説明でしたが、ここから先はいよいよ本題「なぜ資本主義が崩壊するのか」という話です。


 結論から言えば、資本主義というのは、上で説明したとおり2つの価値肥大を起こす、起こさせるシステムなので、崩壊せざるを得ないのです。



 つまり、

本来価値が実物とイコールであるモノに対して、利益という価値と利子という価値を無いところから空想上生み出してくっつけてしまうので、その空想上の何かは、実は存在していません。



 存在していないのに、存在しているフリを続けられるのは、一定期間までです。厳密に言えば、空想上のものが、実物を完全に上回ってしまえば、それは空想上のものだったと気付かれてしまうということになります。




(理論的には、本来の実物の価値と同額以上になると破綻します。しかし、サブプライム問題のときには、本来価値に対して20倍以上もの債権額になっていたそうですから、実際にはかなり複雑です)



 日本が国債を発行していますが、国家予算が2兆円だとして、国民が1兆円稼いで、1兆円国債を発行して、1兆円返すのであれば大丈夫です。


 しかし利子がつきますから、1兆円が1兆2000万円になり、1兆5000万円になり、2兆円になります。

返す金額が国家予算と同額になれば、国が運営できませんから完全に破綻します。借りたお金は1兆円だったはずなのに、空想上の何かが増えることで国家は破綻するわけです。


 しかし、国家が破綻しても、実物は存在しますから、次の日から国民が皆消えうせるわけではありません。

 経済は実物に戻るので、国民は金額的には貧しくなりますが、本来のモノは存在し続けます(ただし、買おうとすると高くなる)



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 この世界は、基本的には「地球という資源を食いつぶしているだけ」です。物理科学を知っている人は


質量保存の法則(エネルギー保存の法則)


というのがあることを覚えていると思います。


 なので、何か化学反応が起きても、「何かが増える」ということはありません。


 ということは、資本主義のように、「価値が増える」というのは物理的にはありえないので、価値というのは空想上のものだとわかりますね。


 従って、空想上のものはいくら増えても、いつかもとのモノと等価になるように調整せざるを得ません。


 なので資本主義はかならず破綻するのです。



 もうちょっとだけ言わせてもらうならば、ひとつだけ地球に増えているものはあります。地球上のモノは常に一定量なのですが、太陽エネルギーだけはとりあえず降り注いできています。


 なので、この分だけは純粋に増加していると捉えることはできますね(^^









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