2018年9月7日金曜日

台風による屋根被害の状況とその対応について H30年台風21号



 ふだん関西圏の建築業界の隅っこで仕事をしているヨシイエですが、今回の近畿圏を襲った猛烈な台風21号で被害に遭われたみなさまには心からお悔やみ申し上げます。



 さて、今回の21号台風では、特に



 板金屋根、防水シート類、看板類、足場類



がそれはもうひどい状態で吹き飛ばされている状況が数多くTVなどに写し出されていました。


 特に板金類は、飛散しどこかへ落ちると、人体を切って傷つける能力が非常に高く、ガラスなどが飛散するよりも危険な状態を生むことがあります。



 今回の被害状況で直接ご覧になった方も多いと思いますが、


「板金による屋根類は、台風などの風害にとても弱い」


ということを知っておくのはよいことだと思います。


 特に、阪神大震災・東日本大震災・熊本地震などを経て



「屋根は軽いほうがいい」



というイメージが強くなり、焼き物の瓦屋根が敬遠されて板金の屋根材が増えている最中ではありますが、



「板金屋根は、屋根ごと飛ぶ」


というデメリットも、知っておいて比較するほうがよいでしょう。また、板金屋根は一部補修ができず、剥がれると全部屋根全体を葺きかえる必要があるため、そうしたデメリットも理解しておいたほうがよいと思います。



「重い屋根と軽い屋根はトレードオフの関係にある。


 重い屋根は台風に強く地震に弱い


 軽い屋根は台風に弱く地震に強い     」




ということを頭の片隅に置いておいたほうがよいと思います。





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 さて、これから多少酷な話をします。



 常に現場サイドで、昨今の建築業界を取り巻く事情をリサーチしているヨシイエさんの情報ですが、


 陶器瓦の屋根職人も板金屋根の職人


も、すでに関西圏では圧倒的に人数が足りていません。(もっと言えば大工さんとかもそうですが)




 何が起きているかを時系列で書くと、



■ 平成30年豪雪により、まず近畿北部では屋根が雪によって多く破損した。


 → この軒数がものすごく多く、屋根関係、建築関係の末端の職人は2018年春から夏にかけて補修仕事が数十件抱えながらの業務となっている。





■ 平成30年7月豪雨で、屋根関係の補修は既にオーバーフローした。


 → いわゆる梅雨前線と台風7号による大雨被害で、「屋根が飛んだ」事案が多発。 豪雪以降遅れがちになっていた屋根関係の補修仕事が、完全にマヒした。

 


■ 平成30年大阪北部地震で、完全にノックアウト


  → いわゆる高槻茨城などの北摂地震で、こちらも屋根・躯体の被害が多数発生。該当地域への補修工事は、すでに「誰もいけない、手がつけられず放置」の状態になっている。




■ いよいよ今回、平成30年台風21号


 → もはや補修に回れる建築職人はいない。私が勤めている会社にも「職人はいないか」とバンバン電話がかかってくるが、完全に対応不能。





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 こうして全体の流れを追うとよくわかると思いますが、ここ数年来の建築不況により実働できる建築職人が激減している中、



 大雪、大雨、地震、台風


の4連発で、需要と供給のバランスは一気に崩れていることがわかると思います。




 そのため現場では何が起きているかというと



「とりあえずブルーシートだけ掛けにくるにわか業者が出没」(屋根や構造に詳しい人たちではなく、とりあえず屋根に上ってボッタくる)



「どの工事業者に電話をかけても、誰も相手にしてくれない」(通常顧客を優先しているため)




「工務店が下請け業者を探しても、まったく言うことを聞いてくれず下見にも来てくれない」(すでに下請けさんもオーバーフローしているため)



という状況になっているわけです。



 おそらくこれは1年ぐらい続きます。





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 どうしてこういうことになったかと言うと、業界の構造が「安値志向」「ローコスト住宅」ブームで、現場の職人さんへのお金の配分が長年少なくなってきたため、




「建築職人という仕事は美味しくない」



ということがバレてしまって、人手がどんどん去っていったからなんですね。



 ところが、業界全体としては、「少子化」「着工軒数減」なので、人手が減ってもバランスがとれてしまっていたのです。



 どうせ新築物件は建たないので、職人の数も多くなくてよい、という状態へソフトに移行してしていた矢先の災害の連鎖だったので、



 そもそも工事ができる人材は、もとからいない



ことになってしまっていたのです。




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 こうした事態を避けるには、車の車検制度ではないですが、住宅にある程度の


「数年ごとのチェック制度を義務付ける」


 などして実働できる職人の絶対数を維持できる政策がないと、どんな災害が来ても修復すらできないということが起きてくると思われます。



 いや、すでに今日の大阪から、それは始まるのです!いっしょに目の穴をかっぽじって、これから何が起きるかよく見たほうがいいです。まじで。








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