2018年7月24日火曜日

【資本主義をハックする 6】 商品の『価値』がわかれば、あなたの『価値』が見えてくる




 毎度おなじみ中小企業の管理職のおっさんが、なんとかしてこの資本主義の荒波を渡っていこうとする世知辛いコーナー。



 そう!資本主義をハックしてウハウハだぜ!



のコーナーがやって参りました。



 実際は、まだまだウハウハどころかヒイコラヤットコセな状態が続いていますが、いつかハッキングに成功した暁には、焼肉でも振る舞いましょう。




 さて。



 前回は格差について考えましたが、




  【資本主義をハックする 5】 格差はなぜ起きるのか
 https://kotaro-yoshiie.blogspot.com/2018/06/blog-post_17.html



 よくよく考えると、資本家と労働者の間に格差が起きて現代の日本人は困っているわけではない、ということに気づきます。


 だから、マルクスのお話がなんだかかみ合わなくなってくるんですね。



 中世のヨーロッパのイメージで言えば、「領主と農民」の格差はそりゃものすごい感じがします。 


 その関係を近代に当てはめて「資本家と労働者」というくくりにしたら、これもわかりやすそうですが、どうも現代人とは様相が違いますよね。



 もちろん、「時価総額何十億という会社を経営している人たちと、ぼくたちわたしたち」を比較した場合での「資本家と労働者」については、たしかにそっちも格差があることは確かなんですが、とりあえず目の前のぼくたちわたしたちが気にしているのは



「高級労働者と低級(語弊があるけどすまぬ)労働者の間の格差」



なのではないでしょうか。



 このあたりの話を視点を変えて書くと、つまりは



「価値の高い労働者(単価の高い労働者)と価値の低い労働者(単価の低い労働者)」

 
がいるのはなんでや?



というあたりを検討することになるのでしょう。





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 さて、マルクスは、商品の価値を「投入した労働量」のようなイメージで算出しました。


 つまり、この商品を作るのにどれくらいエネルギーを投入したかで、価格が変わるようなお話でした。



 ところが、「どうもそれはおかしいのでは?」ということが、経済学の世界ではすでにわかっているのだそうです。


 日経Bizgateさんの


マルクス「資本論」は何を間違えた? 〜商品の価値を決めるのは労働量ではない〜

 https://bizgate.nikkei.co.jp/article/DGXMZO3064412017052018000000?channel=DF020420183710


の記事がわかりやすくて、簡潔にまとまっていたので一読をおすすめします。




 この記事では


■ 商品の価値は労働力の積算ではない。


■ 商品の価値は受け手によって、主観的に異なる。そこに差があるから取引が成立する。


■ あらゆる産業の利益率は均一化に向かう。 




の三本が今週のサザエさんのように提示されています。うんがくっく。





 1と2は、まあわかりやすいお話です。 たとえば、夕方になるとお弁当が半額になったりしますが、労働量や素材の積算で考えれば、夕方だろうが朝方だろうが弁当にかかったコストは同じですから、価値も下がらなければ価格も下がってはいけないのです。


 ところが、夕方になると、人々は「残りの時間に価値があるので、残り時間が少ない商品は価値が低い」と推定します。


 だから半額にしないと売れないわけですね。



 2だけのお話でいえば、これまたたとえば


 A iphone

 B Androidスマホ

 C Windows10mobileスマホ


 の3つがあるとして、どれが一番高く売れますか?みたいなお話に関係します。


 たぶん、機械としての性能とかコストはまったく同一にできるんだけれど、(CPUのコア数とか、ディスプレイの画素数とか)実際には、ABCの順でだんだん価格が低くならざるを得ないところがあります。



 そもそもWindows10mobile陣営からしたら、「なんでうちのOSは伸びてくれないねん!」と心から叫んでいたでしょうが、人々からすれば


「おんなじようなOSは3つもいらん」


ということだったのかもしれません。このあたりは多分に「非論理的」であったり「感覚的」なマーケティング要素を含むのですね。






 会社経営の現場に立っているヨシイエさんから見ると、かなり興味を引くのは3番目の話です。



『異なる産業で利益率は均一化する』



とは、どういうことでしょう。



 異なる産業、などのただし書きがつくのでちょっとわかりにくい場合もありますが、同じ産業とすれば話はめちゃくちゃわかりやすいです。



「なぜ定食はラーメンでも和食でもとんかつでも980円に向かうのか」


とか


「なぜマンションは2000万円から3000万円なのか」


とか、そういう見方でもいいでしょう。


 ↑厳密に言えば、この場合は利益率ではなく、「最終価格が均一化」しているので、話が違いますが、こうした事例をたくさん集めてゆくと



■ 同じ産業だと利益率が均一化してゆく



ことはすぐにわかると思います。ところがそれが「異なる産業でもそうだ」というのです。



 ヨシイエさんは、自分の会社の価格決定権を持っているので、自社で販売するものもそうだし、仕入れるものもそうだし、あるいは「仕入先が直接顧客に売っている場合の商品の価格」も知っています。



 そのあたりをじっくり観察していると、たしかに「利益率はある一定の方向に寄っていこうとする」のは確かなのです。



  ぶっちゃけて言えば、現在の某商材関係は、理想の利益率が2割くらいだとすると、1.15くらいしか利益がとれないことが多いです。


 ひどい場合には、自由競争でヨシイエの会社のような小売業社が勝手に価格を決めてもいいはずなのに、メーカーから出てくる参考価格が、



「最初から1.15くらいしか利益が乗っていない価格で書いてある」



場合があります。おい!そこは最初くらいは2割で乗せといて、

 
「ここからまだ値引きできますよ!がんばります!」

 
とか言わせろよ!と思います。



 もはや源流から値段がギリギリなので、関係者全員の給料が上がらないのです。




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 話が脱線ぎみなので戻しましょう。



 資本主義社会において、「利益率が均一化する」理由は簡単です。


 「儲かっている業種があれば、そこにおなじことを考えたやつが参入して、価格を落として同じ商品を提供しようとするので、儲かるか儲からないかのギリまで価格は下がり安定する」



ということがまず言えるでしょう。


 下げすぎると淘汰が進んでまた会社がつぶれるので、バランスのいいところで下げ止まるということはあると思います。




 これをすべての業種で行うとすると、まるで「公式」でも作れそうなぐらいに


「企業数・商品価格・コスト・利益率・商圏・購買需要」


などの係数が出てきそうですね。まあ、そんなもん計算せんでも、勝手に価格は下がります。




 となると、資本主義というのは、


「新しいイノベーションが起きる」



「高い価格で提案でき、売り手と買い手の間に情報量の差がある」



「パクリが参入して価格が下がり、かつ陳腐化してゆく」



「価格なり、利益率なりが均一化する」


 
「需要が一巡して、その商材・商圏が滅ぶ」



ということの繰り返しであることもわかります。



 ヨシイエさんは建築関係のはじっこにいるので、



「藁葺き屋根を囲っている金属カバーの屋根」



なんかを見ると、その栄枯盛衰をめっちゃ感じます。


「藁葺き屋根ばかりだった農村→火事にならないように板金屋根が流行→安全屋根って名前で呼ばれてどこも板金に→藁葺き屋根減少→むしろ藁葺き屋根も、板金カバー屋根もそろって消滅」


みたいな流れですね。この流れの中では



「俺は藁葺き王になる!」


とか


「俺は安全屋根で天下一の施行業者になる!」


とか、どんだけ志が高くても無駄だということがわかると思います。






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 ということは、資本主義をハックするには、



「情報の差、つまりは希少性、革新性を持つ限られた期間に価値と価格は存在する」

 
のであって、

 
「陳腐化すると、価値や価格は下がる」



ことを理解すればいいということになります。



 ということは、商品開発でもそうだし、会社の中でのあなたや私の居場所もそうなのですが、



「常に、新しい価値を持って、他者と情報量の差を有している人材」



だけが高い給与を得られるということで間違いないわけですね。




 ということは、いいですか?



 新人を育ててはダメだ



ということかもしれません。




 会社ですから、新人を育てる必要があるのはわかります。



 しかし、新人が何かをできるようにする時に



「陳腐化してゆく情報や技術の対応に新人を使いこなし、自分はさらに新しいイノベーションを確保してゆく」



ことがミソなのかもしれませんよ?



 これが資本主義をハックして生き抜く、コツだったりして。ああ、おっそろし!!!






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