2017年8月3日木曜日
教員志望者、またすべての教師が知っておくべき 「校長とはなにか」ということ
前回の記事、
「教員の部活動問題が、本音と建前で180度違う理由」
https://kotaro-yoshiie.blogspot.jp/2017/07/blog-post_29.html
は、多数の方に読んでいただき、またツイッターなどでは多くのRTを頂いて感謝しています。
部活動が、職務なのか、ボランティアなのか。あるいは、建前上はこうなっているけれど、本音ではこうだ、という点を「校長」という視点を通して書いたものですが、いまだに現役教師や、教師志望の方のツイッターやネットでの議論においては
「校長とはどういう存在か」
をよく把握していないものが多いので、今回は老婆心ながらそのあたりを書いておきたいと思います。
一般論としての校長職のイメージは
■ 学校の一番の管理者である。
■ 学校を統括するものである。
■ 教育内容と、職務内容について責任をもつ立場である。
■ 指導要領どおりの教育が行われていることと、職員が健康安全に勤められる事について責任をもつ立場である。
などがあろうかと思います。これはこれでOK。まったくその通りです。
しかし、現職の教員でもよく理解していない部分があるとすれば以下のようなことが挙げられるでしょう。
■ 校長は、行政官であり、教育を行う職分ではない。
■ 校長の権限は、高校ではお金を独自に扱うことができ、中小では独自に扱うことはできない。
■ 校長には、教員免許は不要である。
■ 校長は、校内の業務については、独自に物事を進めることができる。
■ 校長は、教員に対しての校外における人事権を持つ。
ちょっとわかりにくい点もありますが、やさしく解説します。
まず、校長は教師の延長線上にあるのではなく、教育を行う施設を管理監督しています。ですから、教育者である必要はなく、「管理者」であればよい、というわけです。
なので、教師から校長へと出世の階段を登る人が多いことは事実ですが、事務長から校長になる人もいるし、教育委員会の事務方の施設課などから校長になることだって可能です。
つまり、彼らは「教育者である」必要はないのです。
その権限は、小中義務校と高校では少し異なるのですが、小中義務校は、ほんのささいなお金の使い方にも教育委員会事務局が「やいやい言う」のが普通です。校長には、あまり現場サイドでお金を動かすことができません。
ところが、高校の校長は権力が大きく、「自分の裁量でお金を動かす」ことができます。
仮に「この教育内容が必要なので、生徒全員バスに乗せてどこそこへ連れて行く!バス代使うぞ!」という思い付きのようなことが突然ひらめいても、それを実行するだけの権限があるということです。
(極論ですが)
また、人事面でもお金が使えるので、「こういう教師・講師を追加で投入するぞ!」ということを本気で考えた場合、教育委員会と調整の上ではありますが、ひっぱってくることもできます。
また、近年よく知られるようになりましたが、「職員会議」は、法的決定権を持ちませんから、すべての現場の教師が反対しても、校長は独断で物事を決定し、遂行することができます。
しかし、校長といえども、法の下にありますので、「違法な労働活動を命令する」ことはできません。これは重要なポイントですね。
校長が行政官であるということは、現場の教師とは視点がまったく違う、ということでもあります。
たとえば、ある高校に「無茶苦茶悪い生徒」がいて、他の生徒に影響を及ぼすなど、問題行動が多かったとします。
現場の教師の視点では、「こういう生徒は置いておけないので懲戒なり退学なり、断固とした措置を取るべきだ」なんて職員会議で意見が出たりしますよね。
その時、校長がそれに同意するかどうかは、校長の視点によって大きく異なります。
「その生徒が、外部に出て、治安に大きな影響を与えるような育ち方をするのであれば、最終的に警察や司法のお世話になるようなことがあるだろう。そうなる前に、学校としてその子を正せるところまで教育するのが我々公務員の責務である」
と実際にある校長先生は言いました。つまり、警察・司法・学校という行政組織の一として、どの場面でどの人間に当たるべきか、という話です。
これが行政官の考え方です。
こうした考え方がベースにあるので、教育困難校(高校)で定員割れした場合、どんな生徒でもまずは受け入れろ、という校長が多いのは、そのような行政官としての訓練を受けているからにほかなりません。
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さて、最後にみなさんの立場に関係ある話をしておきましょう。
校長は、実はそれなりに強大な権力を持っていますが、校内で起きる出来事については、教頭や副校長、そしてその学校に長くいる古参の教師とある程度仲良くやっていきたいと考えていますから、それらの権力を振りかざすことはあまりしません。
しかし、校長が本気になれば、一つだけ「完全無欠の、誰にも逆らえない武器」を使うことが許されています。それが校外の人事権です。
これは、簡単にひとことで言えば、教師であるあなたを
「どこへ飛ばすか、好き放題にできる」
ということです。逆に言えば、校長が教諭に対して持っている武器はたったひとつこれだけです。
もし、校長の考えにそぐわない教師が校内にいるとします。そのままでは別に何もおきません。それだけで飛ばされることはないです。
ただし、校長に対して面と向かって考えが異なることを主張し、彼が大人気なく怒りを抱いたら、その教師は
「離島でも郡部でも、義務校なら中学から小学校へでも、好き勝手に飛ばされる」
ことだけは覚悟しなくてはなりません。
教師というのは、どこにいても教師であり、子供たちはどこにいたって教育を受けるべき可愛いこどもたちです。
↑この大前提の理論を悪用すれば、ある先生が「どの学校がふさわしくて、どの学校がふさわしくない」なんてことは全く無く、何処へ行っても教師たる職分を果たすべきである、ということを振りかざすことができるのです。
(この話は、実際に私のかつての同期が、離島へ飛ばされた事実をもとに書いています。そして、彼は帰してもらえず退職しました。)
組合活動などが盛んな地域だと、「校長に食ってかかるのはかっこいい」みたいな間違った風潮がある場合も見受けられますが、校長とはそういう存在だと正しく理解して、きちんと誠実に話をするのがもっともよいと思います。
校長とて人間ですから、誠実できちんと話ができれば、逆にさまざまな意味であなたの意見や気持ちを認めてもらうこともできるのですから。
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