2014年11月8日土曜日

G型大学とL型大学をめぐって ~教育再編の裏話・密かに話されていたこと~

 ここのところ「高校生のための人生の教科書」を勝手に連載中ですが、興味深い話が飛び込んできたので、一時中断して書いておきます。


今週ぐらいから、各ネットニュースサイト等で話題になっていますが、


 G型大学 L型大学


なるキーワードが盛り上がっています。


 どういう話かといえば、これらの大学教育は、グローバル(G)・世界に通用する人材を育てるための大学と、ローカル(L)日本国内で仕事をする人材を育てるための大学にわけようじゃないか、という議論です。


THE PAGEさんのサイトより


現代ビジネスさんのサイトより



 詳しい話は、いろんなニュースサイトにあるので、そちらを見てもらえばいいのですが、私はあんまり表に出てこないネタをお話します(笑)


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 今回のG型大学とL型大学の話は、単純化すれば以下のようなことです。


①東大をはじめとした、一部の優秀な大学において「教養」をベースにしたアカデミックな「学問」を勉強させるべきであり、そこから世界で活躍できるような人材を輩出する。


②それ以外の中程度以下大半の大学については、「仕事の実務」に役立つような中身を授業で教えて、実務を担う人材を輩出する。


③その比率は、議論はあろうが、ざっと言えば、5%の優秀な人材と残り95%のその他大勢くらいのイメージ。


みたいな。


 まあ、こういうイメージに対して賛成派と反対派がやりあっていて面白いです。


賛成派>実際問題、アホみたいな大学ができすぎていて、彼らがまともに仕事の実務にさえつけないのであれば、職業訓練も視野に入れてしかるべきである。

反対派>大学は専門学校じゃない。大学で純粋学問を教えなくなったら終わりじゃないか。


みたいな。


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 この話、いきなり聞かされるとみなさんのように「ああでもない、こうでもない」と意見を言いたくなるのですが、私からすれば、


 こんな話は20年前から実はスタートしているのだ


という事実をぶっちゃけてしまいたくなります(ウフフ) おせーよ。


 どういうことかといえば、私は当時、某公立の高校で勤務していましたが、その頃から、まず


高校教育の段階で、数パーセントのトップ校と、それ以外の学校に分ける


ということを文部省が画策しているという話が出ていました。


 高校の序列化は、すでに完成しており、都会に住んでいる人であれば


「私立のトップ校」「公立の二番手」「公立のふつうレベル」「私立の底辺」


みたいな学校のランク分けが成立していることを知っていると思います。


ところが、これは大都会だけで、47都道府県のうち、東京や大阪といった大都市以外の県では、


「公立のトップ校(旧制中学・女学校の流れ」「公立の二番手」「公立のふつうレベル」「私立の底辺」


みたいな状態になっているわけです。


 というわけで文部省のイメージとしては、これをもう少し明確化して、上位層とそれ以外を切り分けて、提供する授業内容を変える、ということを実はスタートしているわけです。


「数パーセントの頭のいい子を作り、そいつらに国をひっぱってもらう」


という発想。それがこの問題の根幹部分なのですが、実は大学以前に高校でそれをやりはじめていたわけです。


 具体的には、「スーパーサイエンスハイスクール」とか「スーパーイングリッシュハイスクール」などの指定がそれに当たります。


 なぜ科学と英語なのか。それこそ「グローバルに活躍し、新しい研究イノベーションによって国力を維持できる人材」とピッタリ符合すると思いませんか?


 まかり間違っても「スーパー日本史ハイスクール」とか「スーパー国語ハイスクール」とか「スーパー体育ハイスクール」ではないのです。

 だって、そんなのでは国をひっぱっていけませんから!



 また、ふつうレベルの高校には、やたら選択授業を増やして、極端な話「職業訓練のまねごと」みたいなことをしたり、パソコン教室でエクセルを学ぶ的な授業は、すでにさんざんやりはじめているわけです。



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 こうして、既に20年前から実現に向けてじわじわやってきたことを、いよいよ本丸である大学教育に持ち込もうとしているのが今回の話であって、今頃それが「いいのか悪いのか」なんて議論しても遅いことは否めません。


 すでに、外堀は埋められているわけです。


 家康の大阪城作戦に匹敵する、文部省の思惑は以下のように進んできました。



① 高校レベルでの差別化。(中等教育において「横並び」をやめる)


② 専門学校・短大を4年生大学に移行するようにサポートする。(このせいで、専門学校や短大がごっそり減りました)


③ わけのわからん大学教育を認可。(観光学部とか、スポーツマネジメント学部とか、いわゆる純粋学問以外の学部開設を許可)



 すでに、「大学教育」という名前ではあるけれど、実際のレベルが大きくことなる状況が、お膳立てとして作られているわけです。


「東大法学部生」と「なんちゃら大学ビジネスサポート学科生」が、おなじ重みの「学士卒業証書」
を持っているのが今の状況ですが、これが


同等(の価値がある)


と思っている人はこの日本には誰1人としていません。そこがまたミソです。


 つまり、みんなが「大卒の重みが、実はレベル差・ランク差があるよね」と思っているところに、ぶち当ててきているのが


G型大学・L型大学の提案


なわけで、提案どころか、実態はすでにそのレールに乗せられているわけです。わたしたちは。




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 とはいえ、そんな日本の国家戦略は別にして、私が個人的に思うのは、情緒的ですが


「大学では教養を学びたい」

「大学では学問をやりたい」

よね、やっぱり。


 そういう意味では、実務のために「大学を出て、専門学校で学びなおす」とかある意味「まとも」だしカッコよかったような気もします。

 今は、そういう選択肢が減ってしまっているのが残念なのですが。







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