2014年8月27日水曜日

土砂災害から逃れるたった一つの方法 実話

 広島県の土砂災害では、とてもたいへんなことになっていて、今日現在も、一人、また一人と亡くなられた方が増えているような状況です。


 被災された方には心よりお悔やみ申し上げます。



 今回の台風11号から引き続いての大雨では、京都府福知山市、兵庫県丹波市といった近畿地方でまず被害が発生し、それから広島県で大きな土砂崩れがありました。


 
 私の旧ブログ「年収300万円台のボクが、オール電化庭付き一戸建てを買えた理由」というシリーズでは、家を建てる、買う際にしっかり見ておくべきいろいろなポイントについて、土地・建物それぞれ記事にしていたのですが、今回はあらためて


「土砂災害から逃れるたった一つの方法」


について書いておきたいと思います。


(旧ブログはこちら http://blogs.yahoo.co.jp/nensyu_300 )



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 まず、今回の広島の災害では、


① そもそも地盤が弱く扇状地のようなところを造成して宅地にしたのがどうなんだ説


② 行政が早く「避難指示」をだしていれば被害が少なかったのでは説


③ 宅地開発が早すぎて「土砂災害警戒区域指定」すらできていなかった説


など、いろいろな周辺的な原因が取りざたされています。また、これらの事については、識者の方もそれぞれ意見を述べておられますが、絶対的な正解のようなものはあるはずもないわけで。





 そこで、せっかくこの記事にたどり着いた方には、私がこれから話をする「実話」を読んで、自分なりの感想をもっていただきたいと思います。



 これは、ある一人の人物が、「土砂災害から逃れるために何をしたか」ということ、それから、「周囲に何ができたか」「何ができなかったのか」ということを示す物語です。



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 Aさんという方がいて、その人は私の親戚です。


 Aさんは賃貸住宅の一戸建てに住んでいて、その立地は駅前でとても便利がいいのだけれど、裏に山を背負っているようなところでした。



 もともと、山すそに並んで数軒の家が建っていて、それらは古い農家だったりするのですが、Aさんが借りていた一戸建ては、古い母屋に対して新婚さんの離れとして建てられた経緯で、今風の住宅、ということになります。



 また、Aさんの家の目の前に駅前交番があり、防犯上もとても安心な立地条件でした。



 Aさんの家の横は、もともと母屋があったところをつぶしているので、とてもひろい駐車場になっていて、砂利がしきつめられています。


 
 私は、用事でAさんの家を訪れたとき、雨が降った翌日にその駐車場の砂利から、溝に向かってきれいな水が染み出しているのをみたことがありました。


 Aさんに聞くと、大雨のあとに、たまにそういう状態がおき駐車場がぬかるむことがあるそうです。




 そのときは、なんとも思いませんでしたが、数年立ってから、あるとき、Aさんの家の前を車で通って、山をちらりと見たとき、違和感を感じました。


 それは、ふだん草木が生い茂っているはずの裏山の一部に、大きな石がいくつかごろごろと露出していたので、そこだけが真っ白く見えるという違和感でした。



 そこで、私は、Aさんに「裏山の様子が、ちょっと変なのだが気付いている?」という話をしました。

 するとAさんは、「石が露出していることは気付かなかったけれど、夜中に山で何か音がしたのは聞いたことがある」というのです。



 あまり、いい状況ではない、と直感して、Aさんに「すぐに大家さんと相談するように」と話をしました。



 大家さんは、自分も駆けつけて状況を確認しましたが、「だからといって、今すぐ何かをどうこうできない」と考え、Aさんとの間では「できるだけ早く引っ越すことと、一部の家賃について減免を考える」ことで話がついたようでした。



 それからAさんは、市役所に相談に行き、「自分の住むところがこういう状態なのだが、仮住まいでもいいので、市営住宅に入れてくれるなどの対応が可能か」どうかを尋ねました。


 すると、市役所は、とても誠実に応対してくれ、県の土木課にもすぐ連絡をとって調査に入るように手続きしてくれましたが、残念ながら住居については


「被害が出ていない状況で、入居用件に該当しないAさんを入居させることは難しい」


という回答になりました。そういう制度がないことと、Aさんが働いているので、市営住宅要件の収入面でオーバーすることもあったからです。




 その状態でしばらく事態は止まっていました。



 ところが、こんどはひょんなことから、私が仕事上で付き合っている大工さんから、重要なことを聞いたのです。


 
 話はAさんが住んでいる家のことではなく、その並びの何軒か離れた古い農家住宅の改修についてでした。


 大工さんが言うには

「あそこの家をリフォームすることになったんだが、基礎が弱いのでいじろうと思ったら、なんと床下の土部分に溝が掘ってあって、それが側溝につながってるんだ。明治か大正の建物だろうけど、あんな基礎は見たことがない」

とのこと。


 わたしにはピンと来ました。私や大工さんがとやかく言うことではないのですが、あるいは増してや、依頼者のお施主さんに言うべきかどうか迷うところですが、


「その家を作った明治の大工は、この地区の山すそから水が出ることをわかっていて、それを排水できるようにわざわざ床下に溝を掘っている」


ということなのです。これで、わたしが見た駐車場の砂利から湧き出る透明な水と話が通じました。


 そうです。この地区は、山にとっては沢の一部であり、水の通り道なのです。


 結果的に、大工さんはそのことをお施主さんに話したそうです。そうするとこんな答えが返ってきました。


「この地区が山を背負っていて、そういう状態にあることはわかっている。それは昔からそうじゃ。でも先祖伝来の土地でもあるし、わかっているからといってできることがあるじゃろうか。そんな山とともに、わしらはここで暮らしてきたんじゃからのう」


と。




 それからほどなくして、もう一度事態が動きます。私が住んでいる町も、Aさんと同じ町なので、あるとき市長と懇話会が私の住む地区で実施されたとき、私は直接市長に質問したのです。


「私の親戚がいま、こういう土砂災害の恐れで困っているのだけれど、一般論として被害が出る前に、なにか行政が出来ることはないのか検討お願いします」


と。


 すると、市長は驚いて「そんな事例が市内で起こっているとは!すぐに土地計画担当課長をよこしますので、もっと詳しく教えてください」とおっしゃったのです。


 そして、今度は、Aさんサイドからではなく、私経由でもう一度調査が入ることになりました。

 結果としては、Aさんが市役所に相談にいったことがほったらかしになっていたわけでなく、Aさんサイドからの話と、私(市長側)サイドからの話がうまくリンクして、再び市や県で現地調査をし、判断することになりました。


 さらに、警察とも連携があったようで、交番からAさんの安全について見回りがくるようになりました。そこには当然、山が崩れたら交番もやられる、という危機感の共有があったのです。



 そして、市の担当者は、わざわざその結果なども私に連絡をくれたのです。



 結論はどういうことだったか。


 ① たしかに現地は土砂災害警戒区域に指定されている。実際に土が露出しているし、動いていることは間違いない。


 ② しかし、この土地を改良するには、複雑に入り組んだ土地所有者の合意の問題と、県の土木がここをいじるための予算を通さなくてはならない。


 ③ まっとうなルートで予算化するなら数年かかるし、緊急で何かするにも即日実施は不可能だろう。


 ④ 今、現時点で被害が起きていない以上、平たく言えば「様子をみましょう」になる。しかし、それでは、住民の方の命を誰も「安全だ」と確約できない。



 というようなことでした。


 私も、行政を悪く言うつもりはまったくないし、むしろ、関係者は全員良心に基づいて即座に動いてくれたように感じています。


 市民からの要望に答えるという点では、パーフェクトに近いのに、しかし、結果結論は、


「どうすることもできない。今は」


というものであることに気付かされたのです。



(逆の言い方をすれば、交番にとっても「どうすることもできない」ので、勤務の警察の方はずっと裏山を気にしながら勤務なさっているそうでした) 



 そこで、私もAさんも気付いたのです。「この問題は、誰かに頼っていてもだめだ。命を守るためには、自分たちで行動するしかない!」と。
 


 そこからは迅速でした。


 私はAさんに資金を提供して(親族ですから)、安全な場所に違う住宅を確保し、すぐに一緒に手伝って引越ししました。


 大家さんにも、住宅を出る旨申し伝えると、大家さんも「自分ももう賃貸で貸すつもりはない」とおっしゃられました。


 そして、大家さんはすぐにその土地建物ごと、激安で売りに出したのです。



 駅前の一等地で、駐車場状態でも収入が取れるような土地を、数百万円で放出しました。もちろん、そういう事情で手放す、ということを明言した上で。





 ・・・・・・それから、今でちょうど1年が経過しています。


 こればかりは、とてもよいことに、その裏山はまだ崩れてはいません。その土地を新しく買われた方は、事情をちゃんと説明を受け、「住まずに仮置き場として使う」とおっしゃったそうです。



 Aさんは命を守る行動を取りました。


 大家さんは、危険箇所の責任者になることを避け、きちんと説明をして手放しました。


 市役所は、何もできないままですが、警察とともに警戒をつづけています。



 
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 この実話から、何を感じ取るかはあなた次第です。しかし、この話には、土砂災害にまつわるすべての要素が含まれています。

 土地とはどういうものなのか

 住むとはどういうことか

 行政に何ができるのか

 私たちに何ができるのか。

などなど。




 私は、反論や炎上も覚悟で書いておきます。実際に体験したものとして、


「危険を感じ取るのも、我々生活者の責務であり、それは自分の責任で全力で戦わなくてはならないことである」


と、そして


「頼れるのは自分だけだ。行政は悪い意味ではなく何もできない。」


とも言えます。



 だから、家を買うもの、土地を買おうとする者は、全力で学ばなければなりません。営業マンの口車に乗せられるのではなく、大地の息吹を読み取り、感じ取らなくてはならないのです。



 土砂災害や水害から逃れるたった一つの方法、それは勇気です。



 危険があるかも、と思ったら、その物件に手を出さない勇気、


 危険だと思ったら、そこから完全に離れる勇気です。



 逃げ出してもいい、売り飛ばしてもいい、あなたはそこから遠く離れてください。すぐに。






 
 

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