2011年9月11日日曜日

台風と災害のお話


台風が近づいていますね。

擁壁が高い家は、土砂災害に注意です。ちっちゃい溝みたいな川でも、溢れたら床下浸水しますよ。大きい川ならなおのこと、水害には注意してください。

「山すそ」の家も要注意です。昔谷だったところを盛土して住宅地に造成しているところは、そのまま本来の谷の形のまますべり落ちることがあります。

台風が来るたびにいろんな住宅の安全を祈りたくなる、pray for マイホーム。
吉家孝太郎です。


もともと、日本の住宅というのは、まず「台風対策」で作られています。いまでこそ「耐震性がどうのこうの」とか「地震に強い〇△ホーム」みたいなイメージが先行していますが、伝統的な住宅というのは、まず「台風に強い」「火事に強い」ということが念頭に置かれていることを知っているとよいと思います。

ぶっちゃけ、日本の住宅に求められている性能というのは、幅広すぎる傾向がありますね。

「地震に強い」「火事につよい」「台風に強い」「夏涼しい」「冬暖かい」「雪につよい」

「光熱費が安い」「泥棒が入りにくい」「段差がない」「駐車場がほしい」「ガーデニングがしたい」「庭でバーベキューがしたい」

希望を挙げればキリがないくらい(笑)

もとい!

地震に強いかどうかはちょっとおいておいて、台風に強く火事につよい、ということでこれまで日本家屋には「日本瓦」が重宝されてきました。

瓦というと、いろんな素材でつくられたものがあるのですが、古い意味での瓦は焼き物(土を焼いてつくった)の屋根材を示します。

この「瓦」、昔ながらの技術ではたいへんよくできていて、まず重量があり、重いので台風が来ても容易に持ち上がりません。江戸時代であれば板葺きやかやぶきの屋根がたくさんありましたが、軽い材だと台風が来るとカンタンに持ち上がってめくれてしまいます。
今でも、板金の屋根とかは、よくめくれあがって空を飛んでますよね。瓦はその点、重いのでよっぽどでないとめくれません。(余談ですが、台風で瓦が飛ぶのは、昔の瓦は釘止めしていないからです。なんと置いているだけ!で持ちこたえていたわけですから、それだけ重いわけですね。現在は、釘止めされているので、まず瓦が飛ぶことはありません)

そして、土を焼いて作っているので、「燃え」ません。すでに焼かれまくったあとのものなので、焼ける要素がまったくないわけです。板金屋根だと、焼かれると酸化して穴があくし、プラ(FRPなど)の屋根材は難燃加工をしてあっても当然燃えます。

壁もおんなじで、土壁は焼いても土のままだから、土蔵なんかで採用されていたわけです。日本家屋で見かける「焼き杉板」は焼いてあるので水ははじきますが、炎にはまったく弱いです。
なので、高度成長以降の壁は、木造壁でもセメントモルタルを塗りつけて防火壁にしてあるわけです。

もとい!

ちなみに、瓦屋根が重いことには、耐震上も昔は意味があったと言われています。たとえば、空になったUCC缶コーヒーを思い浮かべてください。

空のUCC缶コーヒーは、横からつついたらすぐ倒れそうになりますね。これは地震に弱いということです。

缶を開ける前のUCC缶コーヒーならどうでしょう。ちょっと倒れにくくなりそうですよね。耐震性が高い住宅は、こういう意味で「木材=軽量鉄骨<重量鉄骨」の順で地震に強いと言われるわけです。

では、空になったUCC缶コーヒーなんだけど、上に丸いガラスの灰皿を置いたらどうなるでしょう。

これは、ただの空コーヒーより、倒れにくくなります。上から押さえつける力が働くからですね。

(もちろん、耐え切れずに、コケてしまった時は、ちょっと大変です。ガラスが落ちて大変なことになりますけど)

日本住宅というのは、こういう仕組みで持たせていたので、実は空の缶コーヒーよりは、地震に強い設計になっています。

瓦屋根が1000年近くも日本の住宅で採用されてきたのは、まったく理由がないわけではないのです。


というわけで、台風と火事と地震のバランスを考えた結果、日本の風土は瓦を選択してきたようです。

ちなみに余談ですが、スレート葺きの建物は、台風が来ると、屋根材が一枚ずつ

「パタパタ!パタパタ!」
します。

あんまり壁材のサイディングとかはパタパタしませんのでご安心を。

でも、屋根はパタパタします。このパタパタの「たわみ」に耐え切れないと、スレート屋根材は、パキンと割れて、

 フライアウェイ!!!!


します(笑)

割れた屋根材が飛散して、となりのお家の窓ガラスに、

アタックウゥウ!


します。

いやあ、台風が近づきました。風雨に気をつけて、建物ウォッチしてみてくださいね。

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